インタビュー・座談会
日本在宅介護協会 期中改定とスライド制で人材流出に歯止め

訪問介護の基本報酬引き下げが大きな波紋を呼んだ改定から1年半。改定後も続く物価高騰や深刻な人材不足は事業者の経営を圧迫する。日本在宅介護協会の森山典明会長は「このままでは全国の事業者の存続が危ぶまれる」と危機感をあらわにする。在宅介護事業者の現状と同協会の活動について話を聞いた。
当協会は今年6月に、石田昌宏参議院議員立会いのもと、福岡資麿厚生労働大臣と面会し、要望書を手渡した。要望の柱は2つ。物価や賃金の上昇に応じて介護報酬を毎年見直す「スライド制」の導入と、介護職員の処遇を他産業並みの水準まで引き上げるための財政支援を行うことだ。
長引く物価・光熱費の高騰に対し、事業者は制度上、価格転嫁ができない。また他産業で大幅な賃上げが進む中、介護業界との賃金格差は開く一方で、人材の流出にも歯止めがかからない状況だ。これらの問題が事業の存続を大きく脅かしている。こうした中にあって、訪問介護では基本報酬まで引き下げられた。社会・経済情勢の急激な変化に、現行の介護報酬の仕組みではもはや対応しきれない。
短期間にもかかわらず、要望に賛同する署名は1万8952筆に上った。現場の切実な声を目に見える形で伝えようと、積み上げると高さ30㎝にもなる署名の束を持ち込み、大臣に窮状を訴えた。
私自身、以前は報酬の単価よりも、これ以上制度や業務が複雑化することへの懸念が強かった。しかし、今は違う。それほどまでに現場の状況が切迫しているということだ。
長引く物価・光熱費の高騰に対し、事業者は制度上、価格転嫁ができない。また他産業で大幅な賃上げが進む中、介護業界との賃金格差は開く一方で、人材の流出にも歯止めがかからない状況だ。これらの問題が事業の存続を大きく脅かしている。こうした中にあって、訪問介護では基本報酬まで引き下げられた。社会・経済情勢の急激な変化に、現行の介護報酬の仕組みではもはや対応しきれない。
短期間にもかかわらず、要望に賛同する署名は1万8952筆に上った。現場の切実な声を目に見える形で伝えようと、積み上げると高さ30㎝にもなる署名の束を持ち込み、大臣に窮状を訴えた。
私自身、以前は報酬の単価よりも、これ以上制度や業務が複雑化することへの懸念が強かった。しかし、今は違う。それほどまでに現場の状況が切迫しているということだ。
「期中改定」実現へ高まる連携の輪
切迫した状況は、業界団体の結束も促している。今年5月には都内で「介護現場で働く人々と家族の暮らしを守る集会」が開催された。発起人には、私を含む16団体と9政治連盟の代表が名を連ねた。人材不足や物価高騰に苦しむ介護現場の窮状を訴え、来年度の期中改定の実施に向けて、財源確保を求める決議を全会一致で採択した。
9月には、現場の実情を改めて把握するため、13団体と連携して緊急実態調査を再び行う予定だ。物価・光熱費の高騰による影響や、職員の処遇改善の状況などをアンケートで把握する。国の予算編成に間に合うよう、調査結果を踏まえて現場の実情を改めて訴え、期中改定などの要望活動に総力を挙げる。疲弊する現場に今後の展望を示し、離職や事業撤退の流れを食い止めたい。
もっとも報酬面の改善だけでこの深刻な人材不足を克服できるわけではない。我々事業者自身も、ケアプランデータ連携システムやテクノロジーの活用などを通じて、業務効率化や生産性向上に一層努めていく必要があるだろう。(談)
9月には、現場の実情を改めて把握するため、13団体と連携して緊急実態調査を再び行う予定だ。物価・光熱費の高騰による影響や、職員の処遇改善の状況などをアンケートで把握する。国の予算編成に間に合うよう、調査結果を踏まえて現場の実情を改めて訴え、期中改定などの要望活動に総力を挙げる。疲弊する現場に今後の展望を示し、離職や事業撤退の流れを食い止めたい。
もっとも報酬面の改善だけでこの深刻な人材不足を克服できるわけではない。我々事業者自身も、ケアプランデータ連携システムやテクノロジーの活用などを通じて、業務効率化や生産性向上に一層努めていく必要があるだろう。(談)

森山典明会長
(シルバー産業新聞2025年9月10日号)