インタビュー・座談会
「最後まで好きなことを」 タバコをくゆらせ逝った母/小池百合子さん(後編)
東京都の小池百合子知事は、母・恵美子さんを自宅で看取った。当時の介護体験を振り返ってもらった。インタビュー後編。
チームの情報共有に一役買った「介護日誌」
――実際にどのように介護に取り組まれましたか。
主に介護に携わっていたのは、私以外に医師、看護師、ヘルパー、事務所スタッフ、それから兄でしたので、最初に「チームで看取る」という意識を共有しました。そのために一役買ったのが「介護日誌」です。
母と過ごした時間の記録や、介護・医療スタッフをはじめ、母の療養に力を貸してくれた人との情報共有に利用するなど、私の介護になくてはならないものでした。どのような様子だったのか、何を食べ、どのような会話をしたのかなど、その時々に母のそばにいた人が記録を残す一種の連絡帳です。
例えば、▽夜中1時にセンサーが鳴って駆け付けると、ベッドからトイレに移動しようとしていた▽9時30分にドクターマリオと看護師が来宅▽12時40分リビングに。「どん兵衛」の麺を2本食す▽18時50分ステッキが欲しいと言って、ステッキを持って一瞬立ち上がり、その後横になる――など、その時々の様子が簡潔に書かれています。そうすると、その日一日、母がどんな様子だったかが一目でわかり、安心につながりました。
医師からの酸素供給機の使い方のアドバイスなども日誌に残しておくことで、誰が母を看ていても適切に対応ができる安心感も得られました。
「胸が痛い→鎮痛剤を投与するモルヒネポンプの緑のボタンを押してください」「起こしてほしい→基本的には本人の希望をかなえてあげてください」など、病状に対しての具体的な指示が記載されていましたので、私自身、何度もこのメモに助けられました。
主に介護に携わっていたのは、私以外に医師、看護師、ヘルパー、事務所スタッフ、それから兄でしたので、最初に「チームで看取る」という意識を共有しました。そのために一役買ったのが「介護日誌」です。
母と過ごした時間の記録や、介護・医療スタッフをはじめ、母の療養に力を貸してくれた人との情報共有に利用するなど、私の介護になくてはならないものでした。どのような様子だったのか、何を食べ、どのような会話をしたのかなど、その時々に母のそばにいた人が記録を残す一種の連絡帳です。
例えば、▽夜中1時にセンサーが鳴って駆け付けると、ベッドからトイレに移動しようとしていた▽9時30分にドクターマリオと看護師が来宅▽12時40分リビングに。「どん兵衛」の麺を2本食す▽18時50分ステッキが欲しいと言って、ステッキを持って一瞬立ち上がり、その後横になる――など、その時々の様子が簡潔に書かれています。そうすると、その日一日、母がどんな様子だったかが一目でわかり、安心につながりました。
医師からの酸素供給機の使い方のアドバイスなども日誌に残しておくことで、誰が母を看ていても適切に対応ができる安心感も得られました。
「胸が痛い→鎮痛剤を投与するモルヒネポンプの緑のボタンを押してください」「起こしてほしい→基本的には本人の希望をかなえてあげてください」など、病状に対しての具体的な指示が記載されていましたので、私自身、何度もこのメモに助けられました。
――介護を経験して、特に印象に残っていることは何ですか。
母が亡くなったのは、家に帰ってきてから12日目です。慣れ親しんだ部屋で、家族や愛犬、看取りに協力してくれた人々に囲まれながら、旅立ちました。
印象深いのは、自宅でドクターマリオから「タバコを吸ってもいいですよ」と許可が下り、本人が大喜びしたことです。リビングで先生と看護師さんと一緒にコーヒーを飲みながら、タバコを吸っていました。
母の「最期まで自分のしたいことをして、楽しく暮らしたい」という願いと、私たち家族の「母が望むことをさせてあげたい」との想いが叶えられました。改めて在宅介護を選択してよかったと感じた一件です。
母が亡くなったのは、家に帰ってきてから12日目です。慣れ親しんだ部屋で、家族や愛犬、看取りに協力してくれた人々に囲まれながら、旅立ちました。
印象深いのは、自宅でドクターマリオから「タバコを吸ってもいいですよ」と許可が下り、本人が大喜びしたことです。リビングで先生と看護師さんと一緒にコーヒーを飲みながら、タバコを吸っていました。
母の「最期まで自分のしたいことをして、楽しく暮らしたい」という願いと、私たち家族の「母が望むことをさせてあげたい」との想いが叶えられました。改めて在宅介護を選択してよかったと感じた一件です。
理想の介護を実現するために必要な介護人材確保
――理想の介護を実現していくためにも、介護人材の確保が喫緊の課題です。
介護の人手不足は、特に都市部で顕著であり、国だけでなく、都としても力を入れており、今年度は「確保」「育成」「定着」を軸に施策を進めています。
「確保」の点では介護の経験のない若い学生や主婦の方に向けて介護の魅力を知ってもらうような職場体験を実施しています。さらに、初任者研修などの資格取得を支援する「介護職員就業促進」なども行い、人材の確保につなげていきます。
「育成」では、例えば国が創設した「介護キャリア段位制度」を採用して職責に応じた処遇を実現する事業者を支援します。講習受講時の経費の補助や導入後に離職率が改善した事業所への補助なども行います。
「定着」を支援するために、ICT機器活用による負担軽減支援事業などを行います。保育にも共通することですが、ICTを活用して、介護業務の負担軽減につながる機器の導入を支援していきます。
このほか、「人手不足で猫の手も借りたい」ということで老若男女が知っているハローキティに「東京都福祉のお仕事アンバサダー」をお願いし、PRなどもしています。
一人ひとりが思い通りの介護を実現できるよう、安定した介護人材の確保・定着・育成を進めていきます。(了)
介護の人手不足は、特に都市部で顕著であり、国だけでなく、都としても力を入れており、今年度は「確保」「育成」「定着」を軸に施策を進めています。
「確保」の点では介護の経験のない若い学生や主婦の方に向けて介護の魅力を知ってもらうような職場体験を実施しています。さらに、初任者研修などの資格取得を支援する「介護職員就業促進」なども行い、人材の確保につなげていきます。
「育成」では、例えば国が創設した「介護キャリア段位制度」を採用して職責に応じた処遇を実現する事業者を支援します。講習受講時の経費の補助や導入後に離職率が改善した事業所への補助なども行います。
「定着」を支援するために、ICT機器活用による負担軽減支援事業などを行います。保育にも共通することですが、ICTを活用して、介護業務の負担軽減につながる機器の導入を支援していきます。
このほか、「人手不足で猫の手も借りたい」ということで老若男女が知っているハローキティに「東京都福祉のお仕事アンバサダー」をお願いし、PRなどもしています。
一人ひとりが思い通りの介護を実現できるよう、安定した介護人材の確保・定着・育成を進めていきます。(了)
小池百合子 東京都知事
(こいけ・ゆりこ) 1952 年兵庫県生まれ。76 年カイロ大学卒業後、アラビア語通訳を務め、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」などでキャスターとして活躍した後、92 年から政界に転身する。参議院議員・衆議院議員を歴任。任期中の2013 年に末期がんの母である恵美子さんを在宅で看取った。16 年から女性初の都知事を務める。
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自宅での看取りを決意/介護保険のありがたさ について
(介護の日しんぶん2019年11月11日)