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出産・育児を支援する 【介護従事者 2】

出産・育児を支援する 【介護従事者 2】

 人材不足の中、質の向上も求められる介護職。国はこの課題解決のため、介護職員の賃金アップに取り組んでいます。このページでは、出産・育児の支援事例を紹介します。

多様な働き方の整備

 緑豊かな住宅街で、認知症グループホームを運営するグルップボエンデ(東京都杉並区、入倉哲郎社長)は、職員の働きやすさを実現するために出産、育児支援に取り組んでいる。今年1月には、子育て支援や地域貢献活動に積極的に取り組む企業・事業所に贈られる「杉並区子育て優良事業者最優良賞」を受賞。中学就学前までの看護休暇の取得や、妊娠中の女性の体調に配慮した休暇を設けるなど、多様な働き方を進める。

自宅のように暖かなリビング

子どもの急病に看護休暇

 同社が運営する、「上井草グルップボエンデ」が開設したのは13年前。脳外科医として認知症の患者と関わってきた入倉社長が、「住まい」を徹底的に意識した理想のグループホームを作りたいとの思いで開設した。そのためグループホームの内装は、自宅のような居心地の良い空間にこだわり、木のぬくもりを随所に感じる作りとなっている。
 介護職員は、残業や夜勤が多く、子育てとの両立が難しいことを理由に退職する人も少なくない。厚生労働省の16年度予算にも、「介護サービス事業者等の職員に対する育児支援(ベビーシッター派遣等)事業」が新たに設けられた。
 同社も例外ではなく、「出産や子育てを理由に退職する職員が多かった」と管理者の入倉遼平さんは説明する。元々法定で定めた産休・育休の取得は進めていたが、「育児支援を充実させてほしい」という職員の要望もあり、13年から子育て支援の充実に踏み切った。
 育児支援では、中学校就学前までの看護休暇を設け、子供が急な病気などで看病が必要な時に、有給で休むことができるようにした。また、介護休暇も創設し、同様に有給で休むことを可能とした。他にもつわりなど、妊娠中の体調不良に対応する休暇も設けた。
 上井草で働く関真世さんは、そうした育児休暇を取得して職場復帰を果たした一人。「グループホームで1人抜けるのは重大なこと。育児休暇は2回取得したが、2回目の取得でも嫌な顔一つせずに『おめでとう』と言ってもらえたことがうれしかった」と話す。

左から入倉さん、二宮さん、関さん

業界全体のテーマ

 同社が同じ杉並区で運営する「グルップボエンデ井荻」のホーム長を務める男性の二宮孝之さんは、親の介護と子育てが重なり、一昨年10月から1年間の育児休暇を取得。親を病院に連れていくときなども有給で休むことができるので、制度ができてから働きやすくなったという。
 同法人では、現在常勤の職員が26人働いているが、この5年間で5人が育休や産休を取得した。
 「働きやすくないと良い仕事ができない」と入倉さん。子育て支援体制を整えてからは、職員の定着も少しずつではあるが、向上した。今後、子供の看護休暇を時間単位で取れるようにすることも検討中だという。
 介護の人材不足が問題となる中、今いる職員を辞めさせない仕組みづくりは、業界全体のテーマだ。

(介護の日しんぶん2016年11月11日)


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