インタビュー

介護休業制度を活用しよう/小林雅子さん 【家族支援 2】

介護休業制度を活用しよう/小林雅子さん 【家族支援 2】

 高齢者や障がい者の介護。家族には肉体的、精神的、金銭的な負担が生じます。介護休業制度を活用し、周囲の協力を得ましょう。

働く介護者は291万人

 日本は高齢者が3461万人で、総人口の27.3%を占める世界一の長寿国です。
 ひとことで高齢者といっても65歳から116歳まで半世紀を超える幅があり、「元気老人」もたくさんいますが、病気や障がいで介護を必要とする人も増え続けています。
 介護保険のサービスが必要と判定される「認定者」は606万人(2014年度)で、75歳以上が約9割で、85歳を超えると半数以上が認定者になります。認定を受ける理由のトップは脳血管疾患で、認知症、高齢による衰弱が続きます。
 親や配偶者などの家族を介護する「介護者」は557万人で、50代以上が8割になります。そのうち、働きながら介護しているのは291万人で過半数です(表1参照)。
 ただし、無職で介護している人のなかにも、介護のために仕事を辞めたケースが含まれます。

「仕事と介護の両立」 がむずかしい理由

 家族などの介護を理由に仕事を辞める「介護離職」は年平均約10万人で、離職後、復職しない人が7割になります(表2参照)。
 働く介護者を支援する制度として、91年に「育児・介護休業法」ができました。「介護休業法」が定めているのは、①介護休業②短時間勤務③介護休暇――などです。多くの企業は就業規則で介護休業などを保障していますが、実際には一部の人しか利用していません
 制度を利用しない理由で多いのは、「職場に制度があっても対象外」、「周囲に利用した人がいない」のふたつです。

両立のために不可欠な条件

「介護休業法」 の見直し

 今年の通常国会で「育児・介護休業法」が改正され、介護休業・介護休暇の分割取得や取得条件がようやく緩和され、来年17年1月から実施されることになりました(表3参照)。
 制度が利用しづらい理由のひとつである「制度の対象外」というのは、介護が必要な家族の「要介護状態」の規定で、「2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」が条件です。これは、介護保険の認定ランク(低い順に要支援1、2、要介護1~5)とは別の規定で、認定を受けていなくても利用できる半面、要介護2か3のレベルでないと対象外という課題がありました。
 改正では、要介護1程度まで条件が緩和されました。

企業、従業員同士の相互理解

 もうひとつの理由である「周囲に利用した人がいない」というのは、取得条件をクリアしても、実際に利用する人がいないということで、育児休業や有給休暇の取得にも通じる日本の労働環境の課題です。
 政府は「一億総活躍プラン」で、20年代初頭までに「介護離職ゼロ」をめざしています。政策にもとづく支援も大切ですが、介護のために休める労働環境を作るには、企業や働く人の相互理解も重要なポイントになります。

介護環境の事前整備を

 また、介護保険制度についての予備知識も必要です。
 介護が必要になるきっかけのひとつは、病気やケガによる入院です。働きながらだと、入院準備や付き添いなどのやりくりに追われ、すぐに退院後を考えることができません。
 そして、近年増えているのが認知症で、家族の様子が「ちょっとおかしいかな」と感じていたのが、火の始末に失敗したり、行方不明になったりというトラブルが起こり、本人も家族もショックを受けて、すぐに対処できないというケースがあります。
 働く介護者は、①介護休業法を含めた職場の支援体制②介護が必要な人が利用できる介護保険制度③きょうだいなど他の家族とのシミュレーション作業――の3ポイントを意識して、事前の情報収集などをしてください。
 ①は、就業規則を調べるほか、職場で介護について語りあえる日常的な環境づくりに参加することです。介護経験者の同僚がいたら、ぜひ、アドバイスをもらってください。介護中の人がいたら、どんな支援が必要か尋ねるといった交流をしてください。
 ②は、介護保険は市区町村が運営に責任を持つ保険者になるので、認定の申請手続きのほか、利用できるサービスや事業所数にも違いがあります。介護が必要になりそうな人の住民票がある市区町村の相談窓口、地域包括支援センター(高齢者の相談窓口)でパンフレットなどを入手する、インターネットでチェックするなどの情報収集をしてください。
 また、介護について考えたくないという心情はわかるのですが、いざというときは身近な人たちで協力しなければ、介護生活をこなしていくのは大変です。③については、家族イベントなどの折に、ぜひ、話しあう機会を設けてください。
 親が高齢になったときだけでなく、家族や自分自身が不慮の事故に遭遇するケースもありえますから、ぜひ、「情報の保険」をかけておいてください。
(プロフィール)
 2003年より「市民福祉情報オフィス・ハスカップ」(http://haskap.net/)主宰。介護保険を中心テーマに、メールマガジン『市民福祉情報』の無料配信、セミナーや電話相談「介護保険ホットライン」などを企画し、報告書を発行。著書『もっと変わる!介護保険』(岩波ブックレット、2014年)など

(介護の日しんぶん2016年11月11日)


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