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【インタビュー】ねんりんピック大会会長・江崎禎英氏(岐阜県知事)

【インタビュー】ねんりんピック大会会長・江崎禎英氏(岐阜県知事)

 コロナ禍の延期・中止を経て、5年越しの開催を迎えるねんりんピック岐阜2025。「人
生100年時代の健康づくりの推進」を目指し、全国からスポーツ・文化交流大会へ参加する
約1万人の選手・関係者、ふれあいレク大会に参加する全世代を「オール岐阜」でもてなす。
岐阜には毎日体を動かし、栄養バランスの良い食事を、仲間と談笑しながら摂るといった、県
民の健康を支えるユニークな喫茶文化がモーニングとして根付いている。開催期間中は参加選
手や県内外の人に、その文化に触れてもらう場を広く設ける。大会会長を務める江崎禎英岐阜
県知事に、同県の健康施策と大会への意気込みを聞いた。

――「人生100年時代」のあるべき姿とは。
 仕事をリタイアした後の長い人生を、いかに健康に楽しく生きるかが社会全体の課題です。
高齢化が進むと、若者と高齢者を、支える側・支えられる側に分けてしまいがちですが、そうではなく、高齢者もさまざまな役割を持って社会を支える側に回っていただくことが大切です。
 現役で活躍する64歳までの時代を健康で過ごすことができれば、その後にワクワクする人生の本番がもう1回ある。高齢社会や老後の景色が「暗い」から「自分と社会のために使える素晴らしい時間」に変わります。
それが「人生100年時代」の意義です。
 これは単なるかけ声ではなく、多くの人が実現できる時代になりました。世界的に見ても、超高齢化国である日本が最初に実現することに意味があります。
 そうは そうは言っても、年をとると身体が弱ってくるのは自然なことです。健康を維持するには身体の活性度を最大化、つまり免疫力を一番良い状態にすることがポイントです。中小企業のトップの方々にお会いすると、皆さん病気一つなく健康に過ごされている。
 ここには非常に重要な3つの共通項があります。①美味しいものを食べる②運動をする③社会の役に立っている精神的な充実――。これを一般化すれば、この国を健康長寿の社会にできます。キーワードは「美味しい・楽しい・ワクワク」です。

――健康長寿社会の実現へ、岐阜県ではどのようなことに取組んでいますか

 岐阜を含む中部地方にはモーニングの文化があります。朝、喫茶店で飲み物を注文すると、食事のサービスが無料でついてくる。毎朝通えば、ときには相席もし、徐々に顔見知りが増え、会話をしながら美味しいものを食べる習慣ができます。頑張らなくても自然に、健康の維持管理ができる、極めて有効な手段です。まさしく「美味しい・楽しい・ワクワク」の体現です。
 これを県全体、さらに全国へ持ち帰ってもらうため、新たに「ぎふモーニングプロジェクト」を立ち上げました。
 その一つ「ぎふモーニングスタンプラリー」は、登録店舗(8月末時点376店舗)を巡ってスタンプを集め、その個数に応じて毎月抽選で賞品をプレゼントする企画です。
 また、今年は優れたモーニングのメニューを表彰する「ぎふ健康モーニングコンテスト」も実施。栄養バランスや健康への配慮、地元食材の活用などの基準で、最後は県民約100人による審査を行いました。 さらに、ねんりんピックの大会期間中に、各イベント会場でぎふモーニングのキッチンカーを出店します。ねんりんピック参加選手や大会関係者の皆様には、登録店舗で使える割引クーポンも配布します。スポーツやレクリエーションと共にモーニングで健康増進をはかり、全国へ持ち帰っていただきたい。
 皆さん一人ひとりの「かかりつけ喫茶店」を、地元でぜひ見つけてください。

――地域でなくてはならない居場所の一つになるわけですね。「役割づくり」に関する施策はありますか。

 一人ひとりが「その能力を発揮して活躍できる場所」と「安心してそこに居続けられる場所」の両方を見つけ、役割と生きがいを持ち続けることが必要です。
 どこも人手が足りない一方で、働けるのに働く場がない人が日本全体で100万人以上います。大半が女性です。その理由は「働き続けるにはフルタイム」という根強い考え方の企業がまだまだ多いためです。
 今働いている人の職場環境を良くする「働き方改革」も重要ですが、本県ではこれに加えて、今働いていない人の社会参加を促す「働いてもらい方改革」を推進しています。子育て中の方や高齢者も無理なく働くことができ、そして収入を得る機会を提供します。
 具体的には▽1日1〜3時間の「超短時間勤務」▽労働時間ではなく仕事の成果・実績で評価する「裁量労働制」▽ICT・リモートワークの活用――等の導入を企業へ推奨しています。本人が一番働きたい時間帯に働くことは、生産性の最大化につながります。企業も、定時まで働いてもらうよりコストメリットが大きいのです。
 また、居場所・役割づくりの施策として現在進めているのが、誰もが気軽に楽しく農業体験ができる「アグリパーク」です。土に触れる癒し、野菜や花を育てる楽しみ、収穫する喜びを感じることで心身ともに充実感が得られます。
 ただし本格的な農業は参入障壁が高い。そこで各地域の市民農園などを活用したスポット体験の場を広げます。高齢者の生きがいづくり、障がい者の活躍の場、小中学生の食育・農業体験、観光客の収穫体験・農泊など、多様な価値創出が期待できます。収穫できる作物など、地域性も出てくるでしょう。
 何より、農業は運動にも良い。私も地元の山県市美山に帰っては畑仕事をしますが、1日中草刈りをすると体重が2㎏落ちることもあります。 
 岐阜の最大のアドバンテージは県土の広さ。ですが、今はそれを活かしきれていません。日本国内では過疎地と呼ばれる地域も、実は人口密度はヨーロッパの都市部並みです。畑があり、山があり、川が流れている土地がヨーロッパでは普通の住まいなのです。
 このほか、高齢者に地域活動の担い手になっていただく取組みとして、道路や公園の環境美化活動、一人暮らし高齢者宅への訪問、子どもたちの登下校時の見守り、地域のお祭りへの参加などがあります。これらを通じ、社会活動への参加機会を創出しています。
 県民を代表し、心からの歓迎を申し上げます。本県は、新型コロナの影響による2020大会の延期、2021大会の中止を経て、まさに「三度目の正直」となる待望の開催です。
 岐阜は美しい自然と豊かな伝統文化に恵まれた地域です。世界遺産の白川郷、歴史情緒あふれる飛騨高山、馬籠宿に代表される中山道などの観光地、そして日本三名泉のひとつである下呂温泉や北アルプスの雄大な山々に囲まれた奥飛騨温泉郷など、心身を癒す温泉地が各地にあります。
 ぜひ日本の真ん中にある岐阜県から「美味しい・楽しい・ワクワク」を体験していただき、そこから世界が憧れる高齢社
会、日本の姿を実現していただければと思います。

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