コラム
ティルト機能で解決! 「車いすが痛い」 /木之瀬 隆
座った状態を保てるようにして、食事や外出を支援する技術は「車いすシーティング」と呼ばれます。ここでは、痛みや床ずれを予防できる車いすクッションと、ティルト・リクライニング車いすを使用することで座位保持を可能にする方法を紹介します。
「痛くて座れない」を解決
車いすシーティングは、重度障がいのある人を、起こして座らせて、食べることや外に出かけることを支援する技術です。今回は、高齢者福祉施設「うきま幸朋苑」(東京都北区)に入所されている利用者様で、車いすシーティングにより座位保持が改善し自分で食べられるようになった90歳代の女性について紹介します。
腰椎圧迫骨折などで車いすになり、認知症が進行して車いす座位も難しくなった状態でした。車いすに座るとお尻や背中が痛いと訴えられ、また、食事姿勢も大きく崩れて自分では食べることが難しくなっていました(写真1)。そして、認知症の影響で、食事途中で疲れて寝てしまうこともしばしばありました。
施設の理学療法士と一緒にシーティング評価を行うと、大変小柄な方で座位が取れないレベルで、普通サイズの車いすでは難しいこともわかりました。
施設の理学療法士と一緒にシーティング評価を行うと、大変小柄な方で座位が取れないレベルで、普通サイズの車いすでは難しいこともわかりました。
車いすシーティングの工夫
そこで、ティルト・リクライニング車いすという、重度な障がいのある人でも座れる小柄な方用の車いすと、痛みや床ずれを予防できる車いすクッションを選びました(写真2)。
関節の動きも悪く、ベッドから車いすに移る際に痛みを訴えられるので、リフトによる移乗に変えて車いすに座ったところ、痛みの訴えもなくなりました。
関節の動きも悪く、ベッドから車いすに移る際に痛みを訴えられるので、リフトによる移乗に変えて車いすに座ったところ、痛みの訴えもなくなりました。
車いすを変えた日から座位姿勢がよくなり、食事の際のみ車いすテーブルを使うことで食事動作も可能になり、約30分程度で食事も自分で取られるようになりました(写真3)。
多くの座位がとれないレベルでは、ティルト・リクライニング車いすを使用することで座位保持が可能になります。重度障がいのある方の食事についてはケアマネジャー、介護福祉士、看護師、歯科医師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士などの多職種連携で対応を進める必要があります。在宅の利用者でも、担当のケアマネジャーに相談して、シーティング対応のできる車いすと福祉用具専門相談員を紹介してもらうことをお勧めいたします。
(福祉用具の日しんぶん2019年10月1日号)