連載《プリズム》

予防接種をした1歳児は

予防接種をした1歳児は

 「ファクトフルネス」という、公衆衛生学を教えるハンス・ロスリング教授の本が世界的なベストセラーになっている。(プリズム2019年5月)

 世界の趨勢は、持てる者と持たざる者の二極化に向かっているのではなく、相対的に中間層が増えているという事実をデータで示した本。教授は、「世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる?」という問いを出す。「A20%、B50%、C80%」の三択から選ぶのだが、読者はユネスコなどの飢餓に苦しむアフリカの子どもたちや難民キャンプの写真を思い浮かべて、「答えは、Aかな。Bかな」と思案する人が多いのかも知れない。コラム子もそう思った。公衆衛生学教授はデータを示して、多くの赤ちゃんはワクチン接種を受けており「C80%」が正解だと語る。

 さらに「世界中の人々の1日の所得は?」と読者に尋ねて、米ドル換算で「2ドルか4ドルか、あるいは8ドルか32ドルか」と問いかける。この問いに、教授はつぎのように解説する。「1日を2ドル程度で暮らす最貧層の人々は、200年以上前の1800年には人口の85%を占めたのだが、1966年には世界の人口の半分、50%に減り、2017年には人口の9%まで減少した」として、いま世界中で「数え切れないほどの小さな進歩が起きている」と。

 世界経済の発展は、限られた富裕層が世界の富の多くを持つようになった。山が高くなった分、谷も深くなり、社会の格差は広がっていると言える。その一方で、所得の平準化も進んでいる。

 日本経済が停滞する間に、円が安くなって、多くの外国人客が日本を訪れるようになった。近年の世界経済の成長はめざましく、グローバル化は「中間層」の増大をもたらしている。努力を積み上げ、社会の絶対的貧困は減ってきている。しかし様々な社会のひずみは根深く、手をこまねくとひずみや格差はひろがりかねない。

(シルバー産業新聞2019年5月10日号)

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