連載《プリズム》

制度施行から四半世紀

 今から25年前の2000年4月、介護保険制度が施行された。それまで家族が担うものとされてきた介護を社会全体の課題と位置づけ、要介護認定やケアマネジメントといった新たな仕組みを導入し、高齢者の自立を支援する画期的な制度が始まった。世界的にも類を見ない制度であり、日本の福祉政策の大きな転換点となった

 この制度がもたらした影響は計り知れない。「措置」から「契約」へ、日本の福祉政策を根底から見直しただけでなく、街の風景さえも一変させた。全国各地に居宅介護支援事業所やヘルパーステーションの看板が並び、朝夕にはデイサービスの送迎車が行き交う。歩行器や車いすを利用する高齢者の姿も日常となった。

 現在では600万人を超える人々が介護保険サービスを利用し、ケアマネジメントのもとで自立した生活を送っている。この制度がなければ、どれほど多くの人が介護の問題に悩み、苦しんでいたことだろう。街中で看板や送迎車を目にするたび、この制度が果たしている役割を実感し、支える人々の努力に敬意と感謝を覚える。

 しかし、私たちが望み、生まれた介護保険も、現在は大きな課題に直面している。最大の問題は、介護人材不足だ。厚生労働省の試算では、2040年には272万人の介護職員が必要とされ、毎年3万2000人の増員が求められる。しかし、昨年末の発表では、制度創設以来、初めて介護職員の数が減少に転じるなど、その先行きには不透明感が漂う。

 さらに財源の問題もある。制度創設時には3.6兆円だった給付費が、現在は11.5兆円を超えている。団塊世代が75歳を迎え、介護を必要とする人が急増していく中で、給付と負担の見直しの議論も避けては通れない。

 これから先、少子高齢化が一段と加速していく中で、制度の持続可能性をどのように確保し、必要な介護が受けられる社会をどう実現するか。制度施行から四半世紀が経過した今、私たち一人ひとりが考え、向き合わなければならない問題である。
(シルバー産業新聞2025年4月10日号)

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