連載《プリズム》

重い判決

重い判決

 介護現場には、業務の内容や責任の重さに比べて、介護体制や自分たちの処遇が必ずしも十分ではないという思いが強い。(プリズム2019年4月)

 入居者の女性(当時85歳)は被告が配ったおやつのドーナッツを喉に詰まらせて、約1カ月後に低酸素脳症で死亡した。弁護側はドーナッツによる窒息死ではなく、食事中に起きた利用者の突然の脳疾患・心疾患が死因である疑いが大きいと反論したが、裁判では認められなかった。時間の経った事故の死因が、控訴審でどこまで究明されるのか。この判決がショックだったのは、食事介助にあたった看護職が見守りを怠ったとして刑事責任を問われたことだろう。

 子どもの育児にも、高齢者介護と同様に、地域の支援の仕組みが欠かせない。愛知県豊田市では、昨年1月に母親(30歳)が生後11カ月の三つ子のひとりを床に投げて死亡させた事件があった。両親と三つ子の五人暮らしで、事件時には父親は外出していた。名古屋地裁岡崎支部(野村充裁判長)は、育児うつ状態にあったとしながらも、母親に懲役3年6カ月の実刑判決を出した。被告は量刑が加重だとして控訴している。

 介護人材不足の現状を、地域共生をめざしながら必要な支援体制を模索する介護保険にあって、この2つの事件と判決は私たちに厳しい現実を突きつけている。介護や育児に一心不乱に向かっている人びとが重い責任を負わされる社会では、展望はない。

 東京消防庁HPによると、餅を喉に詰めて救急搬送される件数は、年間約100件。80歳代が一番多い。17年度は12.8%の人が亡くなっている。まずの応急手当は、咳をさせる、下顎と胸を支えて背中をたたくこととある。次号より令和。平和が続くことを願う。

(シルバー産業新聞2019年4月10日号)

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