連載《プリズム》

灯台下暗し

世の中にはよく勘違いされたまま使われている言葉があるが、「灯台下暗し」もその一つだろう。

 ここで言う「灯台」は、海の安全を守る灯台ではなく、ロウソクを立てる「燭台(しょくだい)」のことを指す。周囲を明るく照らす燭台も、その台の下は影となり、灯りが届かない。このことから、「近くの物や身近なことほど、却って見落としやすい」ということわざが生まれた。古くは江戸時代の浮世草子などにその表現が出てくる。
 
 介護分野で先の見えない暗闇と言えば、人手不足の問題であろう。その中で政府が光明を見出そうと後押ししているのが、AIやICT、ロボットなどの「介護テクノロジー」だが、燭台の下で、灯が届かないと感じるのが福祉用具である。マンパワーに代わり、現に280万人もの在宅高齢者の自立した生活を支え続けているにも関わらず、「介護テクノロジー」とは別扱いで、制度改正の度に、給付抑制の議論にさらされている。人手不足の業界にあって、まさに「灯台下暗し」である。
 
 だが、ここに来て、そうした流れに変化の兆しが出てきた。現在、厚労省で検討が行われている「2040年に向けたサービス提供体制等の在り方検討会」において、「テクノロジー活用による生産性向上」の文脈で、「福祉用具貸与も負担軽減の面で活用していくべきではないか」との論点が示されているのである。
 
 政策として、利用者の「自立支援」ではなく、介助者の「負担軽減」に灯が当てられるのも今回が初めてだが、その効果や実力は、介護保険が始まってからの25年で誰もが知るところである。さらに今後は、通信機能を有する福祉用具も出てくる。人材不足の「切り札」として、積極的に活用されることを期待したい。

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