連載《プリズム》

特養の待機者は減ったのか

特養の待機者は減ったのか

 特養入所の待機者が29万5000人になったと、このほど厚労省が発表した。3年前の14年3月の発表では、52万4000人だったので、22万人が減ったことになる。(プリズム2017年4月)

 15年4月改正で、特養入居者が原則要介護3以上の重度者となったことから、その時点の要介護1~2の待機者17万8000人が、待機者リストから外れたのがその大きな理由だ。入所申込者は、各都道府県で把握する状況を集計したもの。厚労省は、待機者のカウントにあたって、「重複申込み等の排除をより徹底し、入所申込者の実数により近づけた」と説明。3年前との対比で、待機者数は要介護3は12.6万人→11.5万人へ、要介護4は12.1万人→10.3万人へ、要介護5は9.7万人→7.6万人へ、1~2割減っている。都道府県によっては、重複があった宮城県は3.8万人から一気に6000人台まで減少した。

 つまり、特養待機者が減ったのは、入所対象者が要介護3以上に限定されたことと、重複カウントを見直したことが主な要因と考えられる。在宅サービスの充実によって、中重度になっても独居者であっても在宅で最期まで過ごせるようになったから特養ニーズが減少した、というわけではない。もっとも、国民年金受給者には特養の個室が高くて入れないとか、施設スタッフがそろわず新設の特養に入所者を呼べないために、特養の居室が利用されないといった状況も、地域によっては発生している。

 厚労省は3月29日、要介護1、2の特例入所の扱いを見直す通知を出した。要介護1、2の申込者が、特例入所要件に該当すると自ら判断し、申し立てた場合には、施設は入所申込みを受け付けなければならないとした。この扱いによって、次回調査では待機者数が回復するだろう。発表数字で「社会のコンセンサス」は変わってしまう。

(シルバー産業新聞2017年4月10日号)

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