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高齢者施設での排せつケアの実態調査③ 高齢者施設で実際に取組まれているケアの内容

高齢者施設での排せつケアの実態調査③ 高齢者施設で実際に取組まれているケアの内容

 スウェーデンで生まれた成人用排せつケア用品ブランド、「TENA(テーナ)」(成人用紙おむつ)を販売するユニ・チャーム メンリッケとシルバー産業新聞は、特養でのおむつの交換やトイレ誘導等の排せつ介護に関する共同アンケートを実施しました。アンケートによると71.6%の特養で「感染対策のために排せつケアの見直し実施」や、2018年度の介護報酬改定で創設された「排せつ支援加算」について、「算定している」と回答した特養はわずか4.5%と低調なことが分かりました。

 今回はアンケートに回答いただいた介護施設に、「新型コロナウイルス感染拡大を受けて取組んでいる感染対策」「自立排せつに向けた取組み」について追加取材を行いました。

 このほか、「データでみる高齢者施設での排せつケアの実態①新型コロナウイルス感染症拡大で7割以上が排せつケア内容見直し」、「高齢者施設での排せつケアの実態調査②排せつ支援加算算定には報酬引き上げ必要」について全3回で紹介しています。

目次

①新型コロナウイルス感染拡大。介護施設ではどう対応する?
②介護施設での自立排せつに向けた取組み。

 ・社会福祉法人中陽福祉会 あやはし苑(沖縄県うるま市)
 ・医療法人 社会福祉法人大潤会グループ 御殿山カーム(大阪府枚方市)
 ・社会福祉法人貞徳会 川名山荘(愛知県名古屋市)

新型コロナウイルス感染拡大。介護施設ではどう対応する?

「あやはし苑」嘱託医と連携した感染対策

 社会福祉法人中陽福祉会 あやはし苑(沖縄県うるま市)では、嘱託医と連携した早期PCR検査の実施など、ウイルスを「持ち込まない」ための取組みを強化している。同施設が作成しているインフルエンザ等の感染症対策マニュアルでは、症状が発症した後に嘱託医に報告し、指示を受けるなどの対応に努めることとしている。

 発症後の医師のサポート体制が整う同施設であるが、養護課長の仲元靖さんは「新型コロナウイルスは、持ち込んでしまったら一気に感染が広がってしまう。『いかに施設に持ち込む前に防げるか』を第一に考えている」と強調する。職員の家族や近隣者で新型コロナの陽性者が発症した場合、保健所が濃厚接触者としなくても、嘱託医が必要だと判断した場合は、すぐにPCR検査を受けられる体制を整えている。

 また同施設では、特養の入所者とショートステイの利用者の導線が交わらないように、①利用するトイレ②食事スペース③入浴時間――などゾーニングを徹底している。また、職員のシフトも極力かぶらないように調整しているという。

 仲元さんは「施設内のゾーニングが確立されるまでは、利用者に自室で過ごしていただくことが多く、生活や動きを制約してしまっていた」と振り返る。トイレのゾーニングができるまでは、ポータブルトイレなどを活用して、特養とショートステイの利用者が交わらないように工夫していた。「早期PCR検査やゾーニングにより、利用者だけではなく職員も安心できる環境をつくれるよう、今後も嘱託医と連携した体制を維持していく」と仲元さんは語る。

「御殿山カーム」ゾーニングやガウンテクニックの研修実施

 医療法人 社会福祉法人大潤会グループ 御殿山カーム(大阪府枚方市)では、2020年に新型コロナウイルスの感染対策としてゾーニングに関する内部研修を2回実施。今後も全職員が参加できるように日程を調整している。

 同施設では外部からの出入りの発生するショートステイは行っていないため、平常時の予防対策とともに、陽性者が発生した場合の警戒度の高い予防対策を想定。陽性者が発生した場合には施設内を「レッドゾーン、イエローゾーン、グリーンゾーン」に分けて対応する環境などを整えた。

 ゾーニングの他、いつ・どこでガウンを着るのか、ガウンの脱ぎ方等を学ぶ「ガウンテクニック」の研修も行った。同施設では、陽性者への介助時に腕まで覆うタイプのガウンを着用してケアを行い、通常の介助時には1ケアごとの手袋交換を行っている。

 (介護課係長)の小林草太さんは「法人として①フェイスシールド②簡易ディスポ③マスク④手袋⑤シューズキャップ⑥ヘアキャップ⑦スプレーボトル――を備蓄し、万が一、陽性者が発生した場合でも、職員の安全を守りながら対応できる体制を整えている」と説明する。

 小林さんは「利用者の中には、職員の口元がマスクで隠れて見えないため会話がしにくいと感じている方もいる。できる限り、利用者の生活に違和感を与えないような工夫を行いながら、感染対策に取組んでいく」と語る。

「川名山荘」個別ケアと感染対策の両立

 社会福祉法人貞徳会 川名山荘(愛知県名古屋市)は、全室ユニット型の特養で、利用者に合わせたケアや感染対策に取組んできた。排せつ介助時の感染対策については、コロナ禍以前から全室にトイレが備わっており、複数の利用者が使う共同トイレはない。

 利用者が多く触れる可能性のある、廊下や食堂の手すり、ドアノブは次亜塩素酸ナトリウムで拭き消毒をし、職員や利用者の手指はアルコール消毒を行っている。

 また、消毒とあわせて重要となる換気は、午前・昼食後・夕方の1日3回程度実施。(統括課長)の鈴木健史さんは「1ケア1手洗い・消毒など標準予防策(スタンダードプリコーション)第一に徹底している。

 今後も、全室個室という特徴を生かして、個別ケアと感染対策を並行して行っていく」と説明する。

介護施設での自立排泄に向けた取組み。

「排せつ支援加算」2021年度介護報酬改定でアウトカム評価導入

 2021年度介護報酬改定で、現行の「排せつ支援加算」は▽入所者全員のスクリーニング実施により、利用者単位の加算から事業所単位の加算体系に変更▽6カ月間の期限を撤廃し、6カ月移行も継続算定可能とする▽排せつ状態の改善(アウトカム)について評価する新区分を設ける▽加算体系に国のデータベース「CHASE(チェイス)」へのデータ提出の義務化▽看護小規模多機能型居宅介護も算定対象に追加――となった。
(出典:厚生労働省)

(出典:厚生労働省)

 今回行ったアンケート調査によると、排せつケアで取組んでいる内容に関する質問では、「利用者に合わせた製品・アイテムの選択」が60.2%と最も多かった。このほか、個別ケアの実施や、排せつパターンの把握、排せつ知識やおむつのあて方に関する勉強会の実施等が挙げられた(下表)。
アンケート「意識的に行っている排せつケア改善への取り組み」

アンケート「意識的に行っている排せつケア改善への取り組み」

「あやはし苑」排せつパターン把握して、適切なトイレ誘導

 あやはし苑では、3年前よりユニ・チャーム メンリッケ社の排せつケア用品「TENA」を導入し、自立した排せつケアへの取組みを開始した。仲元さんは「これまでは、おむつにパットを入れて、パットのみを交換していた。また、排せつケアの委員会であるコンチネンスサポートチーム(CST)もTENA導入を機に立ち上げた」と説明する。

 まずは、利用者お一人おひとりの排せつパターンを把握して時間ごとのオムツ交換から、利用者に合わせたおむつ交換へ変更。これまでは職員の経験値で便の形態から利用者の身体状況等を予測していたが、個別の排せつチェックシートを活用して「どのタイミングでトイレに行かれるのか」「食形態や水分摂取量と便の状態はどうか」など細かく把握している。

 職員から「車いすに座ると便が出る→座位が保てて、便意があるので適切なタイミングでトイレ誘導すれば自立排泄に繋がるのではないか」など利用者に合わせたケアの報告・提案が増えたという。このほか、食事量や水分摂取量の把握や、利用者の好みに応じて摂取しやすい環境づくり(水をスポーツドリンクや黒糖水へ変更、白米をイモに変更など)に取組んでいる。

仲元さんは「排せつ自立の取組みを開始してから、職員の意識が大きく変わった。今後はモニタリングやアセスメントを強化して、より効果的な排せつケアを確立させていきたい」と排せつ自立を通じて考え、行動できる組織の成長に手ごたえを感じ始めている。

「御殿山カーム」自立排せつに取組む意義を職員で共有

 御殿山カームでは、「座位が保てる利用者は職員2人介助でトイレ誘導をする」など10年以上前より自立排せつに向けた取組みを実践してきた。小林さんは「利用者の1日を考えると、排せつケアが占める時間は想像以上に多い。この時間をいかに、快適なサービスを提供するかがケアの質を高めていくには重要だと考える」と強調する。

 年に2回、排せつ委員会を中心に正しいおむつのあて方の研修会を実施。おむつを正しく使用することで夜間のモレを軽減して、利用者の安眠や職員の負担軽減につなげる。このほか、尿測による排せつパターンの把握により、適切なタイミングでのトイレ誘導も実施している。

 介護職員から「水分摂取が少ない利用者へは、施設で提供されるお茶以外に、その方が好んで飲まれるジュースなどを提供してはどうか」「腸内環境改善のためヤクルトやヨーグルトなどの乳性品を摂取してはどうか」など意見が挙がる。お茶だけに囚われず、利用者の嗜好に配慮して、美味しく飲んで、飲水量が増えるような取り組みを実践している。

 小林さんは「日中トイレ誘導する事が、当たり前になっている環境は素晴らしい事であるが、この事が作業的にならないように留意している」と指摘。「今後も継続して『なぜ自立排せつケアが重要なのか』「この時間にお連れする事がその方に本当に適切であるか」「トイレで排泄できる喜び」を職員と考えて、共有しながら、利用者にとって快適な排泄環境を整えていきたい」と語った。

「川名山荘」排せつケアに関する基礎知識を固め、質の高いサービス提供

 川名山荘では全室個室でトイレが完備されているため、本人の申告以外で、詳細に利用者の排せつ状況を把握することが難しかった。そこで、月に1回開催するCST会議で検討したところ、TENAアドバイザーより「便器に装着して尿量を測定する機器」を活用した尿測の提案を受け、利用者の排尿パターンの把握に努めようとしている。「尿量把握により、水分摂取量や、使用するおむつの見直しに繋げている」(鈴木さん)

 同施設の入所者は約80人。水分摂取量の平均は1300mlと、比較的多い量を摂取している。また、便の状態が悪い利用者には、食物繊維やオリゴ糖を食事や水分と合わせた摂取を促したり、歩行など運動する時間を確保して、腸内活動を促す工夫を行っている。自立排せつに向け、食事内容の見直しなども行ったことで、定期下剤の利用も20%程度減少した。

 鈴木さんは「排せつ支援加算が創設された2018年頃より、TENAを導入して自立排せつケアに取組み始めた。まずは、排せつのメカニズムや適切なおむつの選定方法・あて方の知識を職員が持てるように取組んでいる」と説明する。1日8回行っていたおむつ交換が、1日約半分になった。特に夜間は「TENAフレックス」などを活用して交換回数を見直すことで、利用者の睡眠の質向上にも繋がっている。

 「まずは全職員が排せつケアに関する知識の土台を固め、質の高いサービス提供を確立させていきたい」と鈴木さんは話す。
(集計・文章作成)シルバ-産業新聞社

「利用者お一人おひとりにとってより良いコンチネンスケアの実現」

 私たちユニ・チャーム メンリッケでは、お客さまと共に、「利用者お一人おひとりにとってよりよいコンチネンスケアの実現」を目指しております。

 コンチネンスケアについて考えさせていただくことはもちろんのこと、適切なコストや、コンチネンスケアを通じた職場環境の活性化などお客さまの個々の課題に対して共にお取り組みをさせていただきます。

 また、「TENA製品」としても、「スキンヘルス=心地よい肌」の視点を大事に商品展開しています。排せつはとても繊細なケアで、多職種が連携してより広い視点で考えていくことが求められます。多職種が一丸となってコンチネンスケアについて考える、CST(コンチネンス・サポートチーム)の継続的な活動によって、利用者が健康で充実した生活を楽しんでいただけるよう、ともに取組んでいきたいと考えています。
 新型コロナウイルス感染症の拡大により、これまで以上に現場の方々は様々な取り組みが求められております。私たちユニ・チャーム メンリッケでは、2020年4月より「リーエンダ with TENA」を年4回発行し、排せつケアに関わる最新情報や、排せつケアと感染対策の方法等の情報発信を行ってまいりました。病院、高齢者施設の方々と共に取組んでいきたいと思います。

 「リーエンダ with TENA」についてのお問い合わせはucm-mail@ucm-kk.comまでご連絡ください。

ユニ・チャーム メンリッケ「TENA ブランド」のサイトはこちら

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