連載《プリズム》

「標準予防策」

「標準予防策」

 昨年3月、厚労省「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版」が出されている。2013年3月の初版を、近年の施設感染症の動向や新たな知見を踏まえて見直された。(プリズム2020年7月)

 「高齢者施設は、加齢に伴い感染に対する抵抗力が低下している入所者や、認知機能が低下していることにより感染対策への協力が難しい入所者らが生活する場」での感染対策を定める。

 感染対策の基本は、①病原体(感染源)の排除②感染経路の遮断③宿主抵抗力の向上の3つ。「病原体の排除」では嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜、血液、体液、そして、使用した器具・器材(ガーゼ等)や、触れた手指も感染源だとした。

「感染経路の遮断」では、病原体を「持ち込まない、持ち出さない、拡げない」こと。1996年に米国立疾病予防センターが提唱する「スタンダード・プリコーション(標準予防策)」を踏まえて、「職員は、入所者と日常的に長時間接する。標準予防策として、手洗いとともに、排泄物等感染の危険のあるものを扱うときは、手袋を着用し、マスクやエプロン・ガウンの着用、ケアに使用した器具の洗浄・消毒対策についても検討し実践することが必要」とした。「宿主抵抗力の向上」のためには、「日頃からの十分な栄養と睡眠、ワクチン接種も重要」と述べている。有効なワクチンが一日も早く開発されるのを望むばかり。

 新型コロナウイルス出現前の感染対策マニュアルであるが、「職員だけでなく、新規入所者ら(併設のショートやデイサービスの利用者も含む)、面会者、ボランティア、実習生等も、感染症の病原体を施設の外部から持ち込まないように留意することが重要」と記述している。ただ、「標準予防策」の本家であるアメリカでは、高齢者施設で多数のクラスター(集団感染)が発生し、多くの高齢者や介護従事者が感染し死亡に至った。感染対策の実践を継続することの難しさを感じる。

 2月~6月、病院・施設の新型コロナウイルスの感染者数は、患者、利用者、従事者を合わせた人数(本紙まとめ)で、2195人に及んでいる。病院1485人、施設等710人。死者は151人で、病院100人、施設等51人になる。医療・介護従事者と事業者に十分な支援を行って標準予防策の徹底を図らなければならない。

(シルバー産業新聞2020年7月10日号)

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