介護保険と在宅介護のゆくえ

新型コロナによる医療崩壊、福祉崩壊を食い止めよう/服部万里子(連載98)

新型コロナによる医療崩壊、福祉崩壊を食い止めよう/服部万里子(連載98)

 1月15日に日本で初めて新型コロナウイルスによる感染者が確認されて3カ月あまり、日本の感染者は4月25日時点で1万3050人(クルーズ船乗船者除く)、死者は348人と増え続けている。

 国は4月7日に「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」を7都府県へ、4月16日には対象地域を全都道府県に拡大した。外出自粛や在宅勤務、学校の休校、施設や店舗への休業要請などにより、人の流れを80%減らすことで感染を抑える方針だ。しかし、「新型コロナウイルス感染症対策推進室」職員のコロナ感染により西村経済再生担当大臣が在宅勤務をするなど、事態は混迷を深めている。

医療崩壊を止めるために

 陽性患者が増加し、病床が不足することで、他の疾患で必要な手術などができなくなる「医療崩壊」が叫ばれ、病床確保が課題になっている。軽症者をホテルへ移し、病床確保をしようとしている。しかし、都内の感染者の1割が医療関係者だという報道があるように、医療機関の院内感染が拡大している。

 東京の感染症、救急医療のセンター病院である都立墨東病院や慶応大学病院、がん研有明医療センターなどで、医療関係者の感染により救急医療や手術の休止などの状況が起こっている。医療崩壊を抑えるために、第一は高機能マスク、医療用フェイスシールドやガウン、手袋などの防護具を確保すること。第二はPCR検査を徹底すること、第三は医療関係者の自宅待機などで減少した人員への過労対策が必要だろう。

福祉崩壊を起こさないために

 4月27日付の福祉新聞によると、福祉施設で感染者が発生したところは100カ所を超え、5人以上が感染したクラスターが40施設に及んでいる。発熱管理やマスク対応などの対策を徹底し、面会も断るなどの感染予防をしている施設における感染で、受け入れ停止などの影響がでている。都内の障害者福祉センターでは、職員の感染判明後に職員・入所者10人の感染が判明し、1人が亡くなっている。

 厚生労働省は、全都道府県に対して、感染予防をしてサービスを継続するよう要請しているが、通所・短期入所・訪問系の909事業所が「感染防止の自主判断」で休業している。

 職員の不安による離職や、保育所休止に伴う育児など、多様な要因が考えられるが、「緊急事態」が継続することで、福祉現場の崩壊が懸念される。福岡市が先行して打ち出した「福祉現場職員への給付金」など、市町村による具体策が急務だ。

人間崩壊を阻止しよう

 残念なことに、院内感染に向き合う医療職や家族への偏見・差別が指摘されている。休校の長期化や在宅勤務により、家庭内暴力や子供の虐待の増加も表面化している。じわじわと増す閉塞感の中で、事業所間の対立も出てきている。人間を大切にする心を崩壊させてはならない。

 日々新たな事態が想像を超えて発生する新型コロナの現状で、「正しい情報で」「的確な行動」が求められる。表のように「特定警戒都道府県」の新型コロナ陽性率は全国的には10.3%だが、PCR検査数が少なく実態がつかめないと指摘されており、必要な検査が早く確保されなければならない。
服部万里子(日本ケアマネジメント学会 理事)

(シルバー産業新聞2020年5月10日号)

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