連載《プリズム》

1日400枚のエプロン 使い捨てても

1日400枚のエプロン 使い捨てても

 2021年の新年を、私たちは目に見えない新型コロナウイルスと戦いながら迎えた。人から人へうつる新型コロナウイルスの感染を防止するために、生活や経済の動きをできるだけ止めずに、人の移動を制限してきた。冬場に入って感染力が増すと感染者数が増大し、基礎疾患をもつ高齢者らの重症者が増大し、重症者医療機関が逼迫、医療崩壊の手前まで来ている。

 しかも、医療や介護は三密が避けられず、医療機関・福祉施設のクラスターの発生が増えている。厚労省の掌握では、10月12日~10月26日(2週間)=43件だった医療・福祉施設のクラスター発生数が、11月24日~12月14日(3週間)=259件に増えた。累計で、医療機関485件、福祉施設612件に及ぶ。福祉施設の内訳は高齢者施設421件、障がい者施設67件、児童施設124件に伸びた。本紙のまとめ(11面)では、医療・福祉のクラスター数は、11月23日~12月17日=75件になった。1施設の感染者数も増大している。

 本紙22面「トピックス」に、11月の東京都世田谷区のPCR検査で、職員と入居者合わせて15人が陽性となった特養「博水の郷」の取材記事が載る。昨年2月から、職員の会食中止や入居者の面会制限、37度以上の発熱がある場合の原則出勤禁止などの感染対策を行ってきた。陽性者発生後は97人の入居者に対して、感染対策として1ケアごとに使い捨てエプロンを交換するなど、1日400枚以上の使い捨てエプロンを使用した。田中美佐施設長は、「区のPCR検査で、陽性者は出ないと思っていた」と述懐する。幸い、12月1日から通常業務に戻った。現在、同施設では使い捨てエプロン1万枚、マスク1万8000枚などを備蓄する。感染者は出したが、しっかりした感染対策を行ってきたからこそ、収束も早かったのだろう。高齢者施設における新型コロナウイルス感染予防の難しさを実感する。

 政府は、海外のワクチンメーカー3社との間で、合わせて、日本の全人口に相当する量の供給を受ける契約や基本合意を行ったという、明るいニュースもある。医療、介護の現場が崩壊しないように、日本社会は最大限の支援を続けなければならない。

(シルバー産業新聞2020年12月10日号)

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