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コロナ感染が業務上の場合の労災申請/小野山真由美(連載172)

コロナ感染が業務上の場合の労災申請/小野山真由美(連載172)

 仕事中のケガは労災保険の医療費や休業補償の適用が受けられることはご存知の通りです。それが「感染症」となると仕事に関連して発症したとする報告書の提出が求められます。感染経路や罹患した状況により、報告書に記載する事項や添付書類は変更になる可能性があり、管轄の労働基準監督署への問い合わせが必要になります。今回は労災申請の流れがつかめるよう解説いたします。

1.労災保険の範囲

 一般的な業務上の感染症で保険請求ができるのは、医療費と医師が労務不能と認めた期間の休業補償です。新型コロナウイルス感染症の場合、濃厚接触者と認定され出勤できない場合もこの休業補償の対象になり得ます。保健所から一定期間の自宅待機を命じられるケースが多く、その期間が対象となります。

2.使用者の報告書

 労災申請は、通常事業主と申請者本人と医療機関の証明をもって労働基準監督署の調査となります。

 請求人から詳しく状況をうかがう聴取を経て審査を重ねていきますが、今回は使用者報告書として「様式1号」が用意されて、事業の概要・被災労働者の所属・勤務時間等を記載します。

 特に発症前14日間については、詳細な回答が求められています。職場のみならず通勤経路や家族状況、発症前の健康状態等記載する事項があります。

 それに加えて添付書類として組織図や見取図、座席表や被災労働者の業務内容を把握するための日報等が求められる場合があるようですが、介護事業所の場合はすでに具備されている書類となるでしょう。

3.労働者の申出書

 事業所の報告書に加え、被災者には様式2号として申立書の作成が求められています。これには、感染した場合のPCR検査を受けるに至った経緯や医療機関受診の経過等を記載します。

 介護業務従事者場合は、発症前14日間において①新型コロナウイルスに接触した可能性のある業務内容②感染した可能性のある利用者さんに接触の有無③接触した頻度や人数――等を記載します。また業務上か業務外かの判断材料として家族感染者の有無や仕事以外での感染者接触の有無が問われ、発症前の14日間の行動歴の記載も求められます。

4.日頃の記録が重要

 労災と認定する基準は「業務起因性」と「業務遂行性」です。病気の場合この2つの基準がなかなか特定しにくく、審査が長引いたり提出資料が多くなったりします。新型コロナウイルス感染症は発症前14日間に重点を置き、そこを判断の根拠としています。事業所が日報を作成し労働者自身も手帳等で管理をしていれば書類の作成はそれほど難易度が高いものではありません。

 小野山真由美

(シルバー産業新聞2021年1月10日号)

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