連載《プリズム》

プリズム(2025月9月10日号) 省人化によって失われるもの

 夏休みにJRの「青春18きっぷ」を購入しようとしたが、思いとどまった。利用方法が大きく変わり、もはや自分が知る切符とは違っていたからだ。

 かつては、1枚5回分の乗車券セットで、全国の普通列車や快速列車を自由に乗り降りでき、家族や友人ともシェアできるなど、コスパや使い勝手が非常によい切符だった。

 ところが、昨冬から▽有効期間が利用開始日から連続して3日間、または5日間の切符に変更▽1枚の切符を複数人で利用することが不可に――などのルール変更が行われた。JRは見直しの理由に「自動改札機での対応」を挙げる。背景には人手不足の問題や収益改善の課題があるようだ。

 同じく、夏休みに携帯電話が故障したため、端末をキャリアに返却することになった。
返却パックが届き、手順書に従って返却作業を進めていたが、不明点があり、記載された電話番号に問い合わせたところ、「お客様の利用されているプランはオンライン専用なので、お電話でお答えすることはできません」と思いもよらない答えが返ってきた。

 確かに利用している料金プランは、通信大手が店頭での有人サービスを極力省き、オンラインでの手続きに一本化することで、料金を低額に抑えたプランではあるが、「効率性」と「人手によるサポート」のバランスを著しく欠いた対応に閉口した。

 「青春18きっぷ」や携帯電話の「料金プラン」に象徴されるように、生産年齢人口の減少により、社会全体が省人化や効率化の流れを加速させている。自動改札機が普及したことで駅員は減り、携帯電話も店頭ではなくオンライン契約が主流となりつつある。

 そうした流れは介護の現場にも及んでいる。テクノロジー活用による業務の効率化や生産性の向上は必要だ。しかし、利用者の満足度やケアの質を落としてまで実現させることではない。「効率性」と「人力」の境目を見極めてもらいたい。

(シルバー産業新聞2025年9月10日号)

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