連載《プリズム》

プリズム(2025月8月10日号) 介護現場の熱中症対策

 夏本番を迎え、記録的な猛暑が続いている。全国各地で40度を超すような気温が観測され、熱中症による救急搬送が後を絶たない。とりわけ目に付くのが、高齢者の熱中症被害だ。消防庁によると、熱中症で搬送される人の半数以上が65歳以上の高齢者となっている。

 高齢者が熱中症にかかりやすい理由は、加齢に伴う体温調節機能の低下や、のどの渇きを感じにくくなる生理的変化があるためだ。また、「冷房は体に悪い」「電気代がもったいない」といった過去の生活習慣や価値観が、適切な熱中症対策を妨げている側面もある。さらに独居高齢者や認知症の人などは、暑さへの気づきや対処が遅れることが多く、重症化のリスクが高い。

 そうした中で、介護の現場は、熱中症予防の最前線となっている。「顔色が赤い」「いつもよりぼんやりとしている」など、熱中症のサインを見逃さないためのモニタリングや、水分摂取量・エアコンの使用状況など、利用者の暮らしに介入したアセスメントなどが、利用者を熱中症被害から救うカギと言っても過言ではない。

 一方で、介護職員自身もまた、熱中症のリスクに晒されていることを忘れてはいけない。介護の仕事には、猛暑の中での訪問や入浴介助など、厳しい環境下で体力を使う業務も多い。また、マスクやエプロンなどを常時着用しているため、体内に熱がこもりやすくもなっている。利用者の体調変化に気を配るあまり、自身の体調の異変を後回しにしてしまうことさえある。

 6月1日から労働安全衛生規則が改正され、事業者に対して、職場での熱中症対策が義務化された。東京都などの一部の自治体では、介護事業者に対して熱中症対策に必要な物品の購入を補助する動きも出ている。熱中症は高齢者と介護職員の命に関わる重大な社会課題だ。災害や感染症と同様に、介護保険制度でも真剣に対策を検討していくべきである。

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