連載《プリズム》

苦肉の策

介護保険制度の持続可能性を巡る議論が佳境に入っている。

 論点の一つである「ケアマネジメントの自己負担導入」では、住宅型有料老人ホームやサ高住に絞って、利用者負担を導入する案が示されている。長年、介護保険制度の行方を追いかけてきた身からすれば、「そう来たか…」である

 そもそも、今回の提案の背景には、財務省から「施設ではケアプラン作成に利用者負担が生じ、在宅では10割給付で不均衡だ」との指摘がある。さらに、一部の住宅型有老ではケアマネジメントの独立性が十分に保たれておらず、ケアマネジメントプロセスの透明化も問題提起されている。そうした指摘を踏まえて絞り出したのが、今回の厚労省案なのであろう。

 しかし、提案の前提にある「有料老人ホームは実質的に施設と同じ」という認識には慎重さが必要だ。有料老人ホームにせよ、サ高住にせよ、そもそもの考え方は「在宅」であり、暮らす場所によってケアマネジメントの自己負担が変わることになれば、制度の複雑化は避けられない。また、施設と在宅の均衡を論じるのであれば、施設側のケアプランも在宅と同じ10割給付に統一するという選択肢もあってもよいはずだ。そうした考えが出てこない点からも、今回の提案は自己負担ありきの〝苦肉の策〞と言わざるを得ない。

 「介護保険制度においては、要介護者である利用者に対し、個々の解決すべき課題、その心身の状況や置かれている環境等に応じて保健・医療・福祉サービス等が、多様なサービス提供主体により総合的かつ効率的に提供されるよう、居宅介護支援を保険給付の対象として位置づけたものであり、その重要性に鑑み、保険給付率についても特に
10割としている」。制度として何を守り、何を変えるのか――。指定基準に記された一文が重い。

関連する記事

2024年度改定速報バナー
web展示会 こちらで好評開催中! シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル