連載《プリズム》
プリズム(2025月11月10日号) ガラスの天井
「ガラスの天井」を打ち破り、自民党の高市早苗総裁が第104代内閣総理大臣に就任した。男性中心だった政治の世界で、日本初の女性首相が誕生したことに、時代の変化を感じた人も多いはずだ。
高市首相は、政治家として30年以上のキャリアを持ち、経済から外交、社会保障まで幅広く精通している。歴代の総理大臣と大きく違うのは、性別だけではなく、介護経験があることを公言している点だ。在宅介護サービスを利用しながら、東京から奈良に通い詰めて母を介護した経験や、夫である山本拓氏(元衆議院議員)が脳梗塞を発症し、働きながら介護を続けていることは政界で広く知られている。講演会でも食事介助や入浴介助の様子などを赤裸々に語り、「夫が絶対に介護保険を使わないとか、訳のわからないことを言っている」など、介護の苦労が骨身に沁みているかのような発言を行っている。
そんな高市首相。10月24日の所信表明演説では、「赤字に苦しむ医療機関や介護施設への対応は待ったなし」と語り、経営難が続く医療・介護業界に対して、報酬改定を待たずに補助金を支給する方針を打ち出した。過去にも同様の施策を唱えた首相はいたが、期待外れの〝上げ幅〞にとどまり、人材不足や経営難の状況は未だに続いたままだ。
介護保険では、年末までに「2割負担の対象拡大」や「ケアマネジメントの自己負担の導入」、「軽度者への生活援助サービス等の市町村事業への移行」などの議論に結論を出す必要もある。
制度や現場は「ガラス細工」のように壊れやすい。打ち破るのではなく、丁寧に“かたちづくる”政策を期待したい。
(シルバー産業新聞2025年11月10日号)
高市首相は、政治家として30年以上のキャリアを持ち、経済から外交、社会保障まで幅広く精通している。歴代の総理大臣と大きく違うのは、性別だけではなく、介護経験があることを公言している点だ。在宅介護サービスを利用しながら、東京から奈良に通い詰めて母を介護した経験や、夫である山本拓氏(元衆議院議員)が脳梗塞を発症し、働きながら介護を続けていることは政界で広く知られている。講演会でも食事介助や入浴介助の様子などを赤裸々に語り、「夫が絶対に介護保険を使わないとか、訳のわからないことを言っている」など、介護の苦労が骨身に沁みているかのような発言を行っている。
そんな高市首相。10月24日の所信表明演説では、「赤字に苦しむ医療機関や介護施設への対応は待ったなし」と語り、経営難が続く医療・介護業界に対して、報酬改定を待たずに補助金を支給する方針を打ち出した。過去にも同様の施策を唱えた首相はいたが、期待外れの〝上げ幅〞にとどまり、人材不足や経営難の状況は未だに続いたままだ。
介護保険では、年末までに「2割負担の対象拡大」や「ケアマネジメントの自己負担の導入」、「軽度者への生活援助サービス等の市町村事業への移行」などの議論に結論を出す必要もある。
制度や現場は「ガラス細工」のように壊れやすい。打ち破るのではなく、丁寧に“かたちづくる”政策を期待したい。
(シルバー産業新聞2025年11月10日号)



