連載《プリズム》

徹底された財政コントロール

徹底された財政コントロール

 介護親場は大混乱。サービス利用の書類がそろわず、事業者もケアマネジャーもスムースに新年度を迎えられないでいる。都道府県や保険者に照会をかけても、新報酬の詳細が分からず、立ち往生。利用者や家族への説明にも窮する。(プリズム2015年4月)

 介護報酬改定時はお馴染みの光景だが、今回は様相が違っているように感じる。社会保障制度改革が一歩大きく踏み出され、理念は同じでも、ペイ アズ ユー ゴウ(財政中立)が貫かれた制度改正だからである。

 月1万2000円の賃金引き上げ相当の介護職員処遇改善加算のアップ分は、報酬引き下げによってもたらされた。改定率マイナス2.27%の中に、介護人材確保のためのプラス1.65%が内包されている。しかし、介護瑕酬は賃金の源泉である。報酬を引き下げての加算上乗せでは、朝三暮四のそしりも免れない。給与は上がっても、業績悪化でボーナスが減ったのでは元も子もないからだ。ただ、市場経済社会では公による人件費の支配におのずと限界がある。

 都市部の人件費高に対処するため上乗せされた地城加算分についても、他地域を下げての対応だった。「その他」地域の単価を10円に据え置いた結果、地域加算内での調整はできず、報酬全体での引下げとなり、基本報酬の大半が引き下がる結果になった。前回、12年改正時の地域加算も同様に財政中立で臨んだはずだが、今改正のような基本報酬の全面的な減額にはならなかった。今回は厳密な財政コントロールが効いている。

 介護報酬が下がれば、その分、利用者負担が引き下がり、保険料も抑えられるが、人々の願いは介譲サービスの充実だ。80歳を超えると半数の人たちが要介護認定を受けることを思うと、根拠は乏しいが、生涯で4割程度の人たちが介護保険を利用することになるのだろうか。親や配偶者、兄弟などを含めると、介護を必要とする身内を持つ人の割合はもっと多くなる。制度の信頼がなければ、月5000円を超える保険料を許容してきた人々の心は離れてしまう。

(シルバー産業新聞2015年4月10日号)

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