連載《プリズム》

家族介護の危機

家族介護の危機

 介護現場から、財務省の介護保険給付制限案に批判が起きている。介護の現状を見ずに、要介護2までを軽度者と見て、国家財政面の観点だけで給付抑制をかける財務省案は、在宅で自立して頑張ろうとする利用者ご本人や、24時間支え続ける家族介護者の日々の努力を台無しにしてしまうおそれがあるからだ。(プリズム2015年12月)

 デイサービスや訪問介護のケアスタッフは、数時間の関わりを通じて、残りの圧倒的な時間を本人と家族が自分たちだけで過ごせるように留意し、家族等を勇気づけている。

 財務省は、介護の必要度の高い重度者にこそ給付を重点化すべき、と一貫して主張している。しかし、保険給付を外される側の「軽度者」が、実態は軽度ではないことを家族も介護職も知っている。適切な外部からの支援は、継続するからこそ、家族介護は破綻せず、自立へ向かう本人の意欲も立ち消えない。しかも、1人あたりの平均給付費は、要支援1で月2万6000円であるのに対して、要介護5は29万円を超える。

 財務省は、人材枯渇の中で、限られた介護や医療の人材を重度者へシフトせざるを得ないと論じるが、そもそものサービス利用量は全く異なる。要支援者から専門職のサービスを取れば、ただただボランティアが残るに過ぎない、という絵図になる。そうしたボランティアがいるかどうかも不明なまま、介護現場に混乱を起こし、中重度者を増やすばかりになる。

 施設サービスも入れた介護保険全体の給付の増大は、高齢者の増加にこそ要因がある。全介護度を通して、区分支給限度額に対する実際の使用割合は平均5割前後に止まっており、1人平均給付費は当初より減っている。

 10月、11月に大阪、神戸でケアマネジャー、介護福祉士、社会福祉士、福祉用具専門相談員らが集まり、財務省案に対する情報交換会が行われた。「介護保険の危機」と捉え、年明けにも神戸でシンポジウムの開催、現在の事態を広く訴えることを検討している。

(シルバー産業新聞2015年12月10日号)

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