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認知症GH 「胃ろう・経管栄養」対応不可7割

認知症GH 「胃ろう・経管栄養」対応不可7割

 2018年度介護報酬改定を審議する社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田中滋慶應義塾大学名誉教授)が5月24日に開催された。7割の認知症グループホーム(以下、GH)で「胃ろう・経管栄養」の対応ができないなどのデータが提示され、GHのさらなる医療提供体制の強化が論点となった。

退去理由3割「医療ニーズ増」

 GHの数は全国1万3000事業所で19万人以上が利用している。制度が始まって間もない2001年には2.18だった平均要介護度は2.79まで上昇し、利用者の重度化が進んでいる。15年に実施された調査では、およそ半数の事業者で、以前より医療ニーズがある利用者が増えていることがわかった。

 GHの退去理由も「医療ニーズの増加」が34.5%と最も高く、次いで「長期入院」23.4%となっており、医療ケアの必要度が高まると退去に至ってしまうケースが多い。具体的な医療対応で、「胃ろう・経管栄養」は7割の事業所が対応不可としており、「インシュリン注射」も6割近くが対応できない。こうした背景を踏まえ、同省はGHの医療ニーズへの対応を論点に掲げ、審議を求めた。

GHでは現行、看護職員の配置は義務付けられていない。 一方で、日常的な健康管理や状態悪化時に連携調整を病院・診療所、訪問看護ステーションと行った場合には、医療連携体制加算の算定が可能で76%が取得している。また、末期がんや急性増悪など一定要件を満たす場合は、医療保険の訪問看護の利用が認められる。

医療サービスの外付けを主張

 日本医師会の鈴木邦彦常任理事は、「訪問診療や訪問看護などの提供で一定の対応が可能」と、外部から医療サービスが提供される仕組みの構築を求め、GHの規模や看護師不足を踏まえると看護職配置は現実的でないと主張した。また日本看護協会の齋藤訓子常任理事も「必要な時に、必要な医療や看護が外部サービスで提供される仕組みを拡大すべき」と同調。特に訪問看護について、「医療保険の対象拡大か、介護保険で提供できる仕組みが必要だ」と強調した。一方で、「基準外の看護職員配置を評価する仕組みを検討すべき」(瀬戸雅嗣・全国老人福祉施設協議会副会長)との意見もあった。

 また認知症の場合、う蝕や歯周疾患の罹患率が高くなるにも関わらず、本人からの訴えが少ないなどの問題も同省より提起。日本歯科医師会の髙野直久常務理事は、「軽度のうちから、かかりつけ歯科医などと連携し、必要な歯科医療、口腔管理に繋がる方策を検討してほしい」と訴えた。

認知症デイ、認知症関連の加算も議論

 このほか、▽地域密着型通所介護との役割分担を含めた認知症通所介護のあり方▽認知症高齢者が今後も増加するなかで、各種の認知症に関連する加算のあり方――も議題とされた。認知症デイの利用者は5.8万人で、13年度からは横ばいで増えていない。昨年度に創設された地域密着型デイと比べると、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲa(異食や徘徊、不潔行為などの症状がみられる)以上が半数と、より重度の認知症高齢者を受け入れている。委員からは「他のサービスでも認知症対応が進んでいるため、利用が伸びていないのではないか。認知デイのあり方を抜本的に検討しなければならない」(齊藤秀樹・全国老人クラブ連合会常務理事)、「利用側からすれば、認知症で介護が大変な人ほどサービス量が必要になる。費用が割高な認知症デイは選びにくい」(田部井康夫・認知症の人と家族の会理事)などの意見が寄せられた。

 認知症関連の加算については、「各サービスに数多く加算が設けられている。限られた財源の中では、算定実績などを踏まえ、整理していくことが必要」(本多信行・健康保険組合連合会理事)などの声が挙がった。

(シルバー産業新聞2017年6月10日号)

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