連載《プリズム》

10割負担の被保険者?

10割負担の被保険者?

 社会保障制度には所得再配分機能がある。当初所得がおよそ「年350~550万円」の層は、社会保障制度の負担や給付による再配分所得は、当初所得とほぼ同額になる。この層よりも所得が多ければ、再配分所得は少なくなる。所得が少なければ再分配所得は増える。(プリズム2015年9月)

 受給額と税・保険料負担額の差額は、所得50万円未満ならば「プラス約300万円」。一方、所得1000万円程度では「マイナス約200万円」。これで所得格差が縮まる。高齢者の多くは、社会の所得再配分機能によって日々の生計を維持し、医療費や介護保険料などを負担している。

 15年介護保険改正により、こうした応能負担の仕組みである社会保障制度に、資産要件が導入された。8月から実施された「補足給付の見直し(資産等の勘案)」だ。施設サービス等で居住費と食費を低所得者に補てんするのが補足給付。単身者1000万円以上、夫婦世帯で2000万円以上の預貯金を持つ人は、これを受けられない。現在、預貯金等を把握する仕組みはない。当面自己申告で対応する。しかし来年1月実施のマイナンバー制度(社会保障・税番号制度)において、今後、預貯金や不動産などの資産の把握が可能になると、「資産要件」は、社会サービス全般に拡大するだろう。

 介護保険の利用者負担割合も、所得上位20%にあたる、年間所得160万円以上の第1号被保険者(65歳以上)は2割負担になった。さらに財務省は、財政等制度審議会の議論を経て、軽度者の介護保険サービスに、「原則自己負担(一部補助)」の仕組みへの切り替えを建議。政府の「骨太の方針2015」において「軽度者の福祉用具貸与等や生活援助の見直しを検討する」と集約された。これにマイナンバー制度が合体すると、一定以上の資産を保有する人は、「原則自己負担」が導入される可能性がある。我々には考えにくい社会サービスの10割負担だが、欧州などでは実施されており、イギリスでは、およそ400万円の預貯金があれば、デイサービスなどの利用者負担は10割だ。

 私たちは、社会保障制度の持続のために消費税率を引き上げ、将来の不安に備えて介護保険料を支払う。それで10割負担というのでは、制度の信頼はいっきに失墜する。すでに介護現場では、いざ実際に支払いとなれば、負担の大きさに利用者は戸惑い、利用制限も起きるのでは、とおそれる。10月になると、みなさんの手元に簡易書留でマイナンバーを記した通知カードが届く。

(シルバー産業新聞2015年9月10日号)

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