連載《プリズム》

腰を据えて

腰を据えて

 前月に引き続き、介護者の腰痛について。腰という漢字は、月(にくづき)に要と書く。要は、それ自身で「からだの中」という意味をもつという。(プリズム2013年3月)

 「腰に梓の弓を張る」とは、高齢者の腰が弓のように曲がっているたとえだが、昔に比べて、腰の曲がった高齢者は減っているように思う。腰を曲げての作業が多い畑仕事が減り、カルシウムやタンパク質などの摂取量が増えているのが好要因らしい。

 しかしそうした一方で、残念なことに、要介護高齢者のケアにあたる介護職や看護職に腰痛が増加している。在宅の療養環境を整備しようと、重いベッドなどの福祉機器の搬入搬出、組み立てを担う福祉用具専門相談員にも腰痛者が多い。コラム子はかねがね、医療職は何歳になっても臨床の現場を離れずに力量をつけていくが、介護では現場を離れることと「出世」が同義語のようになっていると感じる。せっかく身につけた介護力を現場で発揮できない。この要因に、介護現場における腰痛問題があるのではないか。

 今回、19年ぶりの国の「職場における腰痛予防対策指針」改定の背景には、昨年6月のISO(国際標準機構)の腰痛にかかわるガイドラインの策定があった。日本も意見付きの賛成をしており、向こう5年間でガイドラインにそった施策を実行し、見直すことになっている。それで国の重い腰が上がったとも言えるが、厚労省の労働部局は、これまでも「介護労働者の腰痛予防対策チェックリスト」(09年)や「介護業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」(10年)を作成してきた。テクノエイド協会からは、リフトの活用など「腰を痛めない介護・看護~質の高いケアのために~」が発刊されている。

 指針の見直しでは、腰痛予防のためのリスクマネジメントを行い、常にPDCAサイクルを回していく仕組みづくりが強調されている。そのなかで、腰痛発生の危険回避・低減策として、まず対象者の残存機能と協力度を活かした介護・看護方法の選択や、福祉機器・補助具の利用(省力化)が必要だとされる。日々のケアのあり方を見直さなければ、腰痛は減らないということ。腰を据えて取り組みたい。

(シルバー産業新聞2013年3月10日号)

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