連載《プリズム》

「地産地消」のゆくえ

「地産地消」のゆくえ

 6面の本紙インタビューで、山崎泰彦介護保険部会長は、要介護と要支援の間に引かれていた「点線」が、15年改正で「実線」に変わると答えた。(プリズム2013年10月)

 06年改正で介護給付と切り離された要支援サービスが、今度は保険給付から市町村事業へ移行することを「点線が実線に変わる」と表現した。社会保障制度改革国民会議において、具体的な議論がないままに報告書に要支援者の保険給付外しが盛り込まれたのは、国民会議の委員に基本的な合意があったことを意味するとした。

 誰しもの懸念は、市町村事業になって、介護予防サービスが確実に受けられる保証があるかどうか。40歳から介護保険料を支払い続け、仕事を辞めてからは会社負担がなくなり倍額を払うようになって、85歳で要支援状態になったとしよう。その時までに支払った介護保険料は、45年間で100万円では利かず、200万円も超えているかも知れない。それで、市町村に十分な介護予防サービスや生活支援サービスがなかったら、どうだろう。それまでの介護保険料は、すっかり高齢者のために使い尽くされたと暗に説明されて。並行して、少なからぬ所得税も消費税もせっせと納めてきた。このような状況が今後起こるとすれば、「制度の持続可能性」は危うい。年金を払わない若者と同様に、社会保険に背を向ける中高年が出現してしまうかも知れない。100万、200万あれば、自分でサービスを買うことだってできる、と。税や社会保険は、所得移転の仕組みでもあるが、保険料を徴収する限りは、サービスの確保は「制度の持続可能性」に欠かせない。

 山崎部会長は、市町村の役割を強調した。「自由度が増せば同じ財源を使って、より効率的で効果的な事業を行うことができるようになる。私はそういう意味では、今回の改正案は、市町村の主体性を回復する契機になるとみている。ただし、財政基盤や人的資源の違いには十分に配慮が必要だ」と述べている。いわば「地産地消」となる介護や医療の世界では、各地域が置かれた条件のもとで、サービス供給のための資源をつくるしかない。いま手元にある、介護保険創設以来、14年かけて作り上げてきた介護サービス基盤を活かしたい。

(シルバー産業新聞2013年10月10日号)

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