連載《プリズム》

介護保険の申し子

介護保険の申し子

 ケアマネジャーは介護保険制度の申し子である。それは第一に、ケアマネジメントを担う。制度がもつ画一性を、利用者一人ひとりの個別性に適応させる。韓国の介護保険で事業者や利用者の様々な不正行為があったのは、ケアマネジャーがいないことが理由のひとつだった。(プリズム2012年4月)

 第二に給付管理業務。保険料や公費が民間に支払われるためには、確たる根拠が必要である。求められるサービスを本当に提供したかを確認する。そのプロセスで、関係性が築かれていき、情報共有が進む。第三に制度のスムースな運用。12年改正を含めて、頻繁な制度改定にも関わらず、利用者、事業者、保険者の間にあって、新制度へ軟着陸させる。この優秀な調整力がなければ、介護保険は混乱のふちに陥るだろう。

 第四にはサービス事業者の利用者獲得をあげたい。介護保険サービスを安定的に提供するためには、建物や人材の確保を始め、相当なイニシャルコストと運営費がかかる。当然それを上回る利用者を確保しなければ、事業継続はできない。サービス事業所の多くが居宅介護支援事業所をもつ所以である。顧客の確保の展望が難しければ、事業拡大は躊躇せざるを得ない。全国津々浦々にサービスを行き渡らせるには、ケアマネジャーによる利用者確保力が不可欠である。これらの役割をケアマネジャーは調整しながら進めている。利用者からの信頼を得ているからこそできる技である。月1万数千円の単価では、十二分の働きである

 いまのケアプランには、訪問看護の利用が不十分という指摘がある。確かにケアマネジャーの力量不足もあるかも知れないが、訪問看護は通院困難な場合に使うサービスであり、多くの要介護者は医療機関に通院している。この課題を考えるときに、制度当初ケアマネジャーをめざした看護職の多くがなぜ在宅介護の世界から遠ざかってしまったのか分析する必要があるだろう。

 国の「ケアマネ検討会」が始まった。介護保険制度が生んだケアマネジャー、その果たしている役割をしっかり評価してから議論を始めたい。

(シルバー産業新聞2012年4月10日号)

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