シニア住まい塾

シニア住まい塾《64》 シャロームつきみ野

シニア住まい塾《64》 シャロームつきみ野

 現在、国が喚起しているサービス付き高齢者向け住宅は、居室が18㎡程度の所が多く、元気な人たちには今ひとつ人気がありません。基本的には安否確認と生活相談がついていればいいとなっているので、食事も配食サービスを使う所が多く、そうなると食事も自室でするので、食事無しの下宿という声も聞こえます。

元気な人が暮すグループリビングに介護棟を付随

 現在、国が喚起しているサービス付き高齢者向け住宅は、居室が18㎡程度の所が多く、元気な人たちには今ひとつ人気がありません。基本的には安否確認と生活相談がついていればいいとなっているので、食事も配食サービスを使う所が多く、そうなると食事も自室でするので、食事無しの下宿という声も聞こえます。

 24時間の巡回介護をつけて、という国の思惑も実際にはヘルパーが足りないのが現実です。一時期ブームになったグループリビングですが、その後、住宅型有料老人ホームや、高齢者専用賃貸住宅(今年4月からこの名称はなくなりました)に押されたのか、新規にはなかなか出てきません。ですが、そのグループリビングが最近新たに見直されています。

 今回訪問したグループリビング「シャロームつきみ野」は、神奈川県の大和市にあります。小田急線の中央林間駅から田園都市線に乗り換え1つ目の「つきみ野」駅で降り、川縁を散歩しながら20分歩いた所に位置しています。シャロームつきみ野は全室南向きのグループリビングで、館内の清潔さは12年前の開設時と変わらず、温かみは増していました。最初から入居した人が6人元気でおられました。

 このグループリビングは、地主である木下誠人さんが建てたもので、「施設ではない、自立した人の住まいである」を理念とし、我慢も遠慮もしたくない、されど自立心と自律心のある人たちの住まいになっています。

 今回訪問したのは、入居者も12年を経て介護認定をうける人が増えてきて、その人たちを支える介護用の高齢者住宅「シャローム2号館」を、本館から2分離れた所に建てたと聞いたからです。

 本館の運営は、地域のボランティアが集まった「NPO法人シニアネットワークさがみ」が担っています。NPOがコーディネート役を担い、入居者の生活相談、一時的な病気などの介護、有料の移動サービスのほか、食事作りもしています。

 2号館はオーナーである木下さんが、中心となり運営しています。木下さんは、薬剤師の免許をもちながら看護師の資格を取得し、さらにケアマネジャーの資格もとって、入居者に寄り添う姿勢を貫いています。本館は部屋が広く水回りも全部整っているマンションに食事サービスが付いていて、お楽しみイベントもあります。

 2号館は、館内に居宅介護支援事業所とヘルパーステーションが併設されています。2号館には24時間介護職員がいるシステムで、常時介護が提供できる高齢者住宅(今のところ、通称・高専賃としている)です。医療は両館とも在宅療養支援診療所の西嶋医院が協力してくれます。西嶋医院には、訪問看護ステーション、通所リハビリも併設されており、入居者の健康を支えてくれ、医療依存の強い人の相談にも応じてくれます。

 元気型と介護型の2棟があるのは、高齢者にとって便利な住まいです。元気な間は元気な人と暮したい、介護度が進んだら短い期間だけ介護専用の所に入って逝きたい、という人がほとんどだからです。サービス付き高齢者向け住宅は、建設費に補助が出ますが、12年前に建てたグループリビングは補助がないぶん、利用者負担は高くなります。

 本館・2号館ともにサ付き住宅には登録していません。理由は「高齢者住まい法」による条件が、小規模事業主である木下さんにとっては、ハードルが高い部分があるのです。住まい法のサ付き住宅では、契約者に請求できる金銭は、敷金、家賃・サービスの対価のみ。権利金やその他の金銭を請求することはできない、となっています。シャロームつきみ野のように入居金をとるところ(または前家賃として徴収しても)は、金融機関の保全処置をとらなければなりません。ですが、この保全措置をとるには経費がかかります。

 2006年4月1日に老人福祉法29条で決まった有料老人ホームの制度は、入居人数にかかわらず食事の提供、入浴、排せつ、洗濯、掃除等の家事又は健康管理を提供する施設であれば、全て「有料老人ホーム」として届けを出すこと――となっています(サービス提供を他社に委託して行う場合や将来のサービス提供を約束する場合も含む)。小規模の所は入居金なしでやっているのでしょうか。

 社団法人有料老人ホーム協会でも保全措置の制度はありますが、入居者1人に対して20万円を協会に納める決まりです。ただし、協会に入会するには入会金50万円が必要で、さらに審査料として30万円を要します。協会に加入するにはそれなりのホームで、消費者側にとっては安心材料として考えられるのはメリットです。しかし、個人でいいケアをしていても入居金をもらわなくては、建設費の借金やメンテナンス代が出せないという所はどうしたらいいのでしょう。2015年3月までに各ホームとも入居金の徴収は検討されていますが、枠からこぼれたところで、いい介護をしている所があるのを国としても考えてもらいたいと思います。

 国の制度がコロコロ変わる中で、シャロームつきみ野は「入居金はいただきますが、サービスの質で勝負します」と胸を張り、そのサービスを選んで入居する高齢者がいる個人経営の住まいです。シニア住まい塾では、本当にいい住まいは時代や制度に関係なく、残っていくものと考えています。
<施設概要>

【本館】40㎡=10室(2人入居可)、52㎡=3室(2人入居可)、28㎡=1室の計14室。年齢制限なしで、ペットも飼えます。

▽居室の設備は、一般マンションと同様の設備が全部整っています。

▽費用 75歳以上の52㎡の部屋の例=保証金65万円(返還なし)、入居金360万円(10年償却)、家賃8万円、管理費4万5000円。月の経費12万5000円(食事別)。

75歳未満52㎡部屋の例=保証金65万円(返還なし)、入居金640万円(18年償却)、家賃8万円、管理費4万5000円。月の経費12万5000円(食事別)。※費用は、部屋の広さによって異なります。また入居時に納める額は、その人の希望によって変えられます。

【2号館】18.98~25.66㎡まで13室。

▽居室の設備は、一般のマンション並。ただし浴室はシャワーのみの部屋あり。

▽費用=入居金75万円(3カ月経過後は返還なし)、家賃9万2000円~9万5000円まで(設備と部屋の向きによる)。そのほか5万6000円(生活支援サービス3万円、共益費1万4000円、各室の水道光熱費1万2000円)。月の経費14万8000円~15万1000円(食事別・朝150円、昼500円、夜850円)。

※生活支援サービス費にはフロントサービス、相談援助サービス、コミュニケーションサポート、安否確認サービス、緊急対応サービス、介護の不足分をサポートするサービス(見守り、声かけ、ちょっとした補いサービスなど)が含まれます。本館、2号館ともに食事は自炊も可です。

本館=大和市下鶴間215、☎046・277・4122、2号館=大和市下鶴間5140、☎046・259・6069

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