生き活きケア

多様な人材が活躍できる職場づくり/社会福祉法人さくらぎ会 (あきる野市)

多様な人材が活躍できる職場づくり/社会福祉法人さくらぎ会 (あきる野市)

 特養「こもれびの郷」などを運営する社会福祉法人さくらぎ会(東京都あきる野市)は短時間勤務の非常勤職員(パートタイマー)など、多様な人材が活躍できる職場づくりに力を注いでいる。「条件に合う人が来てくれるまで待つ時代は終わった。さまざまな人を迎え入れられるよう、職場環境を整えていくことが重要だ」と宮林大輔理事長は強調する。(生き活きケア 145)

業務、 勤務体系を細分化。 2時間から勤務可

 同法人では元々、養成校卒業生など、介護福祉士でフルタイム勤務希望者を中心に介護職員を採用してきた。風向きが変わったのは10年ほど前。近隣に大型ショッピングモールがオープンしたのをきっかけに、地域間の「求人合戦」が始まった。「学生の応募も徐々に減り、今まで通りのやり方では必要な人手を確保できなくなると感じた」と宮林理事長は振り返る。

 そこで同法人は採用方針の転換を決める。有資格者・常勤にこだわらず、パート職員も積極的に採用を進めた。同時にそれぞれの希望に沿った働き方ができるよう、業務のあり方の見直しも行った。業務を細分化し、有資格者しか対応が難しいことと無資格者でも行える周辺業務に分類。さらに2~4時間の勤務体系も設定し、「仕事が難しい」「勤務時間が長い」との声に応えた。短時間勤務で周辺業務を行う人材を同法人では「短時間パート職員」と呼んでいる(下表)。この短時間パート職員の募集を行ったところ予想以上の反響があったという。
 こもれびの郷のパート職員の勤務体系

 こもれびの郷のパート職員の勤務体系

 こもれびの郷の短時間パート職員は現在23人。毎朝2時間だけ食事の準備や片付けを行う76歳の職員から介護未経験の18歳の職員までさまざま。希望やライフスタイルにあった、それぞれの働き方で活躍している。

 127項目にも細分化された業務は、習得すると「獲得スキルポイント」として処遇に反映される仕組み。自己評価と主任、副主任が習得度を確認する。「誰が何をできるのかが見える化されているので、過不足なく職員を配置できる。短時間パート職が周辺業務を担う分、有資格者などはコア業務に専念できる」と宮林理事長。

 さらに、ランク別の一覧も作成。自分が今どのレベルで、次はどのスキルを習得すれば、キャリアアップできるのかがわかりやすく示されている。ただ、「介護は自分には荷が重い」という職員には上を目指すことを強制しない。「本人の希望する働き方を尊重し、できる限り長く働いてもらいたい」。
 宮林大輔理事長

 宮林大輔理事長

毎年1~2人がパートから正職員に

 パート職員から常勤の正規職員になるケースも少なくない。こもれびの郷では毎年1~2人のペースだ。正職員確保の重要なルートの一つとなっている。宮林理事長によると、現在28人在籍する介護職の正職員のうち、10人はパートから正職員になっている。「結婚や引っ越しなどの理由で退職者がでても、正職員の数はずっと維持できているのは、この仕組みが大きい」と宮林理事長。

 また、同施設は東京都が実施する「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言事業所」の第一号。ガイドラインに基づき、働きやすい職場づくりに取り組む事業者を公表し、4月2日現在で都内923事業所が宣言事業所となっている。「働きやすいイメージを発信できる。実際、宣言事業所を公表している都のホームページを見ての応募も数件あった。特に介護経験者の応募が多い」とし、PRの重要性を指摘する。宮林理事長は、「せっかく介護現場の仕事に興味をもって門を叩いてくれる方々。事業者が工夫を凝らして、うまく生かすことができれば、業界の人手不足もいくらかは和らぐはず」と多様な人材の活用を呼びかける。
(シルバー産業新聞2019年5月10日号)

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