生き活きケア

短時間有給で「休み方」改革/ソフィアメディ(品川区)

短時間有給で「休み方」改革/ソフィアメディ(品川区)

 東京都内を中心に訪問看護などを運営するソフィアメディ(東京都品川区、山本遼太郎社長)は、2時間単位の有給休暇や育児時短制度の年齢引上げといった独自の働き方改革に、2018年より取り組んできた。現場主体で作り上げた各施策は、特に8割を占める女性職員のライフステージをサポート。働くことへの安心感は離職率を大幅に改善させた。今後さらに求められる在宅療養の充実へ、拠点・人員を急速に伸ばしている。(生き活きケア 158)

安心できる職場づくり 離職率5.5%

 03年に都内で訪問看護ステーションを立上げたソフィアメディ。6月1日現在51カ所のステーションを構え、通所介護4カ所、居宅介護支援7カ所をあわせて880人の職員が在宅患者・高齢者の生活を支えている。

 特にこの1年程では20拠点以上を新設するなど急成長。この起点となっているのが、18年に社内で立ち上げた「北極星プロジェクト」だ。経営陣に加え現場責任者、看護師、セラピスト20人以上が1年かけて議論し、会社の方向性を「ビジョン」「ミッション」「スピリッツ」(VMS)で打ち出した。

 ビジョンは「安心であたたかな在宅医療を日本中にゆきわたらせ、ひとりでも多くの方に、こころから満たされた人生を」。VMS推進本部人材開発グループの宗梨恵子グループマネジャーは「入院日数が短縮していく中、受け皿となる在宅療養を支えるのが私たちの役目。これを全国レベルでみていこうと舵を切りました」と述べる。これまで東京のみだった拠点を東海、北陸、近畿にも広げた。

新たな勤務スタイル

 事業拡大には人員確保・定着が必須。VMSと同時に、職員が安心して働き続けるための施策「ソフィアWOW!」(Work for Our Wonderfullife!)をスタートさせた。

 よく使われているのが2時間単位での有給休暇の取得。「例えば、利用者の都合で訪問が急遽キャンセルになることもあります。その空いた時間を家事に充てたり、また昼休みを長めにとってリフレッシュするといった活用ができます」と宗氏は説明する。

 当日、直前の申請も可。「これまでは、目の前に利用者がいるから、自分の担当だからという思いが無理な働き方をさせ、休みづらくなっている職員も多くいました。短時間で少し休めるという柔軟さが、結果的に従来の1日・半日有給の取得増にもつながっています」(同氏)。有給申請数は月200~250件ほどを数えるという。

 また、20代後半~30代の女性職員が多い同社では、育児・仕事の両立が大きな課題。例えば、育休中の時短勤務については子どもの対象を「3歳まで」から「小学3年生まで」に引き上げるなど、各ライフステージに沿ったバックアップを強化した。

 他には、やむを得ない事情で退職した人の復帰支援「ハローアゲイン制度」や、定年後の再雇用年齢上限を65歳から75歳へ引上げる「HAPPY〝75〟」なども。制度をより使いやすく、こうしたネーミングにも一つひとつこだわったと宗氏は話す。

社外に相談窓口

 さらに「弁護士ホットライン」は、同社の顧問弁護士が仕事・プライベートを問わず、職場では話しづらい内容の相談に応じるもの。内容はもちろん、誰が相談したかも他の職員や上司には一切明かされない。1人あたり年間2万円(相談2時間相当)まで会社が負担する。

 このほか、無利子で受けられる社内融資制度や、給与前払いなど経済面のサポートも充実している。
 
 16年度は17%前後だった離職率が、「ソフィアWOW!」スタート後の19年9月時点で約5.5%と、わずか3年で大幅に改善。採用の場面でもこうした制度が評価され、同社を選ぶ人も多いという。宗氏は「使う・使わないよりも、制度があること自体が『困ったとき、何かあったときに助かる』という安心感につながり、働き続けるモチベーションになっているのではないでしょうか」と説明する。
(シルバー産業新聞2020年6月10日号)

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