生き活きケア

認知症の人が買い物体験/DAYS BLG!はちおうじ(東京都八王子市)

認知症の人が買い物体験/DAYS BLG!はちおうじ(東京都八王子市)

  障がいや認知症などを持つ当事者の意見を企業が取り入れ、ユニバーサルデザインの改善を推進する取組みが活発化している。地域密着型通所介護「DAYS BLG!はちおうじ」(東京都八王子市)は、今年5月、市内の大手スーパー「イトーヨーカドー」と協働し「『経験の専門家』認知症当事者によるショッピングセンター練り歩き」を開催した。実店舗で買い物のデモンストレーションを行い、認知症の人にとって不便な点や気になる点をチェック。同社社員や市職員を交えて意見交換した。

社会参加のバリア解除へ 売り場・レジ案内など店づくりのヒントにも

 2012年に町田市で誕生したDAYS BLG!は、認知症の人一人ひとりが主役になれるよう、積極的な社会参加や居場所づくりの提供などの活動をするデイサービス。考えに賛同した事業所が全国に広がっている。

 今回の認知症の人による練り歩きは、認知症の人が買い物をしやすい環境になっているかを当事者の目で確認することを目的に、市や地域包括支援センター、実店舗と連携して実施。BLGはちおうじに通う認知症の利用者(同事業所では「メンバー」と呼ぶ)4人、イトーヨーカドー本社社員や市職員、認知症地域支援推進員など約25人が2班に分かれ、出されたお題に沿って買い物をし、その後振り返りと意見交換を行った。

簡易的なマークがバリアに

 衣料品売り場では、「婦人用靴下とタンクトップ」というお題が出た。商品を探すメンバーに対し、推進員たちは直接的な答えは口にしない。「靴下はこれかな?」「惜しい!それはストッキングなので、近くにありそうですね」と、あくまで自らの力で見つけられるよう会話をする。

 買い物中に最も苦戦したのは会計。レジの場所が「¥」マークで表示されていたが、メンバーの一人、三宅洋美さんは「マークの持つ意味が分からず、レジにたどり着けなかった」と、シンプルなイラスト表示が認知症当事者にとってはむしろ不便に感じることもあると訴えた。

 また、クーポンやレジ袋の有無、キャンペーンの参加意思などを一気にレジで問われると混乱するとの声も。同スーパーを運営するイトーヨーカ堂CSR・SDGs推進部の強矢健太郎氏は「口頭だけでなく目視でも確認してもらえるよう、レジ周辺の掲示を増やすなどの対策を検討する」と答えた。

「おもいやり優先レジ」の効果

 食料品売り場をまわっている際、三宅さんが「これいいね」と指さしたのは、天井から吊るされた「通常会計レジ」「キャッシュレス専用レジ」の文字。鮮やかなオレンジと緑で色分けされた大きな看板はよく目立つ。床にも同じように色分けされたラインが引かれており、「すぐに認識できて分かりやすい」と嬉しそうな表情を浮かべた。
 イトーヨーカドーでは、2020年5月から「おもいやり優先レジ」を一部店舗に設置している。コロナ禍における店内の混雑緩和対策の一環であり、毎日14時~16時の間、妊婦、高齢者、障がい者など配慮が必要な人が優先的に利用できるよう設けられた。
 BLGで働く認知症当事者スタッフのさとうみきさんは「後ろに並んでいる人を気にして焦る必要がないので、普段からよく利用している」と述べた一方で、「一番端に設置されていることから、フロアを一周した多くの人がなんとなく流れ込みやすく、一般レジとあまり変わらない部分もある。もう少し中央寄りにあれば、本当に必要としている人が利用できるのでは」と、意見を出した。

定期開催でよりよい店づくりを

 振り返りでは、「吊り看板と床の両方に案内が欲しい」「ナナコカードにヘルプマークをつけてみてはどうか」など、他にも様々な意見があがった()。

 強矢氏は「今日の課題をもとに工夫に励み、それに対するフィードバックをもらう、という流れで定期開催を目指す。店舗の中で情報を共有し、スタッフ一人ひとりが自分にできることから取り組むことが大切」と語った。

 また、八王子市福祉部高齢者福祉課の臼井主任は「こういった場に積極的に参加して意見を聴き、よい取り組みは市全体に広めていきたい」とまとめた。
(シルバー産業新聞2022年10月10日号)

関連する記事

(表)認知症の人がスーパーを歩いて気になった点

・ マーク表示だけでは階段やエレベーターの場所が分かりづらい

・ 食品売り場の英語表記(food marche など)が分からない

・ 吊り看板と床の両方に案内がほしい

・ レジ袋購入の際、商品の量に応じて袋の大きさを提案してほしい

・ 商品の相談をしやすい環境を作ってほしい

・ ナナコカードにヘルプマークをつけてみてはどうか