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緊急事態宣言を受けて ③/中山清司(連載159)

緊急事態宣言を受けて ③/中山清司(連載159)

 新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が5月末に解除され、6月19日には県境をまたぐ移動の制限も全面的に解除された。6月末の時点でも、各地で(特に首都圏)ウイルス感染が報告されているが、大規模イベントが開催されるなど、社会経済活動が徐々に戻りつつある。

緊急事態下でも利用者支援を継続するために

 このような状況の中、大阪府では6月12日、第2回新型コロナウイルス対策本部専門家会議が開催された。第2波の感染拡大の恐れを強調する意見も多く、私たちは社会経済活動の正常化とコロナ対策の両面に備えなければならない時期に来ていると思われる。

 障害福祉サービスの事業所の多くは、通常の運営スタイルに戻っているが、感染対策の基本であるマスク・手洗い・検温・消毒の励行・日常化と、普段から3密(密閉、密集、密接)を避ける対応を取るようになっている。以前はテーブルを囲んで複数の利用者とスタッフが食事をしていたのが、今は個別に食事をしたり、席の間隔をあけるようになった。今後、政府が提唱する「新しい生活様式」が、個々の障害福祉サービス事業所にも浸透していくものと思われる。

 自閉症や発達障害の人たちの新たな日常に関して、この先、検討すべき項目をいくつか取り上げておきたい。

 障害福祉サービス事業所の社会的な意義

 緊急事態宣言発出中にあっても、福祉サービス事業所は「支援が必要な利用者に対する支援が提供されるようにすること」(厚生労働省)が明確になった。学校が休校中も、放課後等デイサービスは障がいのある子どもたちの「行き場」であることが求められた。障害福祉サービス事業所は「社会生活を維持する上で必要な施設及び社会福祉施設等」に該当することの重要性を、今後も十分認識する必要がある。

 コロナ感染拡大防止との両立

 その一方で、障害福祉サービス事業所は、通所利用の自粛を含め「感染拡大防止のための対応」が求められた。緊急事態宣言発出中、多くの入所施設は、家族も含め外部からの面会や交流を遮絶した。また、入所している当事者が地域に出ることも極力控えるようにした。一時帰宅や地域で買い物や食事をすることも禁止となった施設もある。この間の対応が、意思決定支援が必要な当事者の意向が十分に反映されていたのかどうか、各施設は検証する必要があると思う。

 外出・移動自粛への取り扱い

 ある移動支援事業所は「マスクができない当事者の移動支援は不可」という方針を示したそうだ。別の事業所では「バスや電車での移動支援は不可」とのことだった。外出・移動の自粛により、多くの障がい者・家族が在宅生活を余儀なくされた。コロナに対する過剰な不安や恐怖により、当事者自らが外出を控える事例も見られる。「新しい生活様式」の中で、自閉症や発達障がいの人たちの地域生活をどのようにサポートすべきか、支援者にとっても新たなフェーズに入ったと言えるだろう。

 オンラインサービスの可能性

 この間、臨時的な特例として、福祉サービス事業所は「音声通話、Skype その他の方法で児童の健康管理や相談支援などの可能な範囲での支援の提供を行ったときは、通常提供しているサービスと同等のサービスを提供しているもの」と認められた。これを機に、オンラインによる相談・支援や会議・打ち合わせの実施が全国的に広がり、不登校・引きこもりの当事者・家族や遠隔地のコミュニケーションツールとして、これからも積極的な活用が期待される。

NPO法人自閉症eスタイルジャパン 理事長 中山清司

(シルバー産業新聞2020年7月10日号)

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