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強度行動障害支援の現場(7)/中山清司(連載156)

強度行動障害支援の現場(7)/中山清司(連載156)

 自閉症・知的障害の人がしばしば示す強度行動障害について、国は国立のぞみの園を中心に、2013年より「強度行動障害支援者養成研修」を整備してきた。障害者総合支援法における施設入所支援等の事業を実施する場合、現場支援スタッフが本研修を受講することで給付費加算が適用される仕組みになっている。

欠かせない「支援者養成研修」

 そのため、全国の障害福祉サービス事業所は、所属する支援スタッフを本研修に積極的に受講させようとしており、今では「受講させたいが、定員超過で所属スタッフをすぐに受けさせられない」という話を筆者はよく聞く。つまり、国は本研修を強度行動障害支援の基本に据えて、全国レベルで強度行動障害支援を展開しようとしていることがうかがえる。

 2013年当時の資料(障害保健福祉関係主管課長会議、13年2月25日)を見ると、国の基本認識がよくわかる。
 強度行動障害を有する者は、自傷、他害行為など、危険を伴う行動を頻回に示すことなどを特徴としており、このため、現状では事業所の受け入れが困難であったり、受け入れ後の不適切な支援により、利用者に対する虐待につながる可能性も懸念されている。

 一方で、施設等において適切な支援を行うことにより、他害行為などの危険を伴う行動の回数が減少するなどの支援の有効性も報告されており、強度行動障害に関する体系的な研修が必要とされている。このため、13年度に、研修の普及を通じて、適切な支援を行う職員の人材育成を進めることを目的として、指導者を養成するための研修を独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園において実施することとした。また、13年度予算案において、都道府県が実施する強度行動障害を有する者等を支援する職員を養成するための研修事業を都道府県地域生活支援事業のメニュー項目として盛り込んだので、積極的な取り組みに努められたい。
 国が主導し、障害福祉サービス事業に精力的に組み入れてきた「強度行動障害支援者養成研修」が、実際どのように展開されているのかを見てみよう。

 本研修は、大きく2つに分かれて構成されている。1つは障害福祉サービス事業所の現場支援スタッフを対象とし、「チームで支援するための最低限の知識を知ること」を目標とする「基礎研修」(講義・演習12時間)であり、もう1つはサービス提供責任者クラスを対象に「チームで支援するための具体的な方法を立案すること」を目標とする「実践研修」(講義・演習12時間)だ。

 のぞみの園の各種資料を見ると、本研修が「基本的な支援の枠組み」「強度行動障害児者支援の標準化」「支援者が標準的な支援を学ぶ」ということを常々強調していることがよくわかる。18年度の「同研修のねらい」から抜粋する。
 既に25年の歴史のある強度行動障害研究の成果として、「どのような方法で支援を行うべきか」が概ね固まってきています。(中略)そして、この事例研究から、基本的な枠組みの骨格が生まれました。これこそが、ネガティブな相互作用を断ち切り、強度行動障害のある人に対して継続的でポジティブな相互作用を提供できる方法のはじめての提案だったのです。その成果を基本に、当研修では、以下の6点を「基本的な支援の枠組み」と呼び、強調しています。
 強度行動障害支援者養成研修は、この「基本的な支援の枠組み」を現場に浸透させることを主目的に構成されている。(つづく)
NPO法人自閉症eスタイルジャパン 理事長 中山清司

(シルバー産業新聞2020年4月10日号)

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