現場最前線の今

緊急事態宣言を受けて ①福祉事業所利用自粛で高まるストレス/中山清司(連載157)

緊急事態宣言を受けて ①福祉事業所利用自粛で高まるストレス/中山清司(連載157)

 ご承知のとおり、2020年4月7日、政府は新型コロナウイルス感染拡大防止に関する緊急事態宣言を、東京や大阪など7都府県に発令した。その後、4月16日には対象地域を全国に広げ、現在に至っている。本稿の執筆時点で、緊急事態宣言が予定通り5月6日で終了になるか延長になるか予断を許さない状況だが、自閉症・発達障害支援の現場最前線から現状をレポートさせていただく。

自閉症の人は先の見通しが持てず不安や混乱に陥りやすい

 今回の緊急事態宣言で、当事者・家族・支援者に最も影響が大きいのは移動自粛・外出自粛の要請だ。安倍首相は「この緊急事態を、5月6日までの残りの期間で終えるためには『最低で7割、極力8割』の接触削減を何としても実現しなければならない。国民の皆様には、ご不便をおかけしているが、さらなる感染拡大を防止するため、引き続き、ご協力を何とぞよろしくお願いしたい」と呼びかけ、全国的に不要不急の外出はしないよう強く自粛要請がとられている。

 知的障害・発達障害の人たちが利用する通所系の障害福祉サービス事業所(以下、福祉事業所)は、緊急事態宣言における都道府県・市町村からの休業要請・使用制限の対象にはなっていない。大阪府堺市を例にあげると、「令和2年4月13日、大阪府緊急事態措置の新たな措置として『施設の使用制限の要請等』が追加された。この中で、社会福祉施設等については『基本的に休止を要請しない施設』に位置付けられ、施設の使用制限及び使用停止に係る要請はなされていないが、『適切な感染防止対策の協力』と『通所又は短期間の入所の利用者については、家庭での対応が可能な場合には、可能な限り、利用の自粛』が要請されています」としている(堺市HPより)。

 つまり、福祉事業所を利用してもいいが、可能であれば利用自粛・在宅対応をしてほしいと利用者・家族は求められている。ほとんどの福祉事業所は現在も開所しているが、利用者・家族が利用を自粛し在宅状態の方も増えてきた。「可能な限り、利用の自粛」とのことで、行動障害の激しい重度の自閉症の人も福祉事業所を利用せず、毎日、家にいて、家族がずっとみている場合もある。

 一般の人もそうだが、屋外に出ることなく家の中でずっと過ごす生活が長期化すると、本人・家族は相当なストレスがかかる。生活リズムが崩れ昼夜逆転の生活になったり、暇を持て余してネット依存や食生活の乱れを誘発するリスクが高まる。重度障害の当事者にかかわる家族は、普段にも増して「本人から目が離せない」「自分の時間が持てない」事態が長く続き、疲弊することになる。

 外出自粛によって、「いつ出かけられるのかわからない」「いつものお店に行けなくなった」など、自閉症の人は先の見通しが持てず不安や混乱に陥りやすいと言える。コロナウイルスというまさに目に見えない事柄に、イメージが持てないわけだ。ある自閉症の青年は、この先の予定がわかず何度も親に尋ねてくる。しかし、親も確実なことが言えず「まだわからないね」「いつか行けたらいいね」と曖昧な返答になってしまう。それでは本人は納得できず、また延々と質問や確認が続き、親も本人もイライラした状態になっていくのだ。

 高機能自閉症の人の中には、テレビのワイドショーや新聞報道の情報から、外出や人との接触を極端に恐れ警戒する方が出ている。中には、周囲にある物を一切触れなくなったとか、マスクやゴーグル・手袋などで完全防備しないと外に出られないといった事案も見られる。

 見通しのある暮らし、平穏な日課を守ることが自閉症・発達障害の人たちの安心・安定のベースになるが、緊急事態宣言による外出自粛要請はそれを維持・支えることを難しくさせている。(つづく)

NPO法人自閉症eスタイルジャパン 理事長 中山清司

(シルバー産業新聞2020年5月10日号)

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