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日本との交流通じ、身体拘束ゼロとテクノロジー活用推進

日本との交流通じ、身体拘束ゼロとテクノロジー活用推進

 台湾南部の屏東県を主な拠点として、在宅介護や入居型介護施設など、多様なサービスを提供する「大愛長期ケアグループ」は、現在約300人の職員と20カ所を超える拠点を有する。日本の介護技術や理念を積極的に取り入れ、介護テクノロジー活用と身体拘束ゼロの推進に力を入れている。

センサー活用し拘束ゼロへ

 同グループの邱秋華代表は、30年以上にわたり医療・長期介護の分野に携わってきた。2008年に入居型看護・介護施設「大愛護理之家」の運営を引き継ぎ、本格的に長期介護事業へ参入し、現在は、訪問、通所、認知症ケアなど幅広く手掛ける。

 日本の介護現場と長年にわたり交流を続けている。「これまでに5回以上訪日し、新しい介護技術や考え方を学んできた」と邱代表。最も多い時では施設職員約15人を率いて、鹿児島県の社会福祉法人州鵬会の施設に約1週間滞在。現場の介護方法を実際に学んだ。鹿児島からも介護職員らが年1回ほど台湾を訪れ交流を続けている。

 日本での研修で特に重視してきたのが、日本式の個別ケアと自立支援ケア。以前の台湾では、高齢者の転倒を防いだり、医療処置を行いやすくしたりするため、ベッドや車いすに高齢者の身体を拘束することも少なくなかった。しかし、邱代表は日本の施設を訪問した際、身体拘束しなくても安全にケアできる技術を目の当たりにし、大きな衝撃を受けたという。

 自施設でも身体拘束ゼロを実現しようと、同グループでは介護テクノロジーを積極的に活用。センサーシステムを整備し、利用者が離床したり居室から出たりした際に、動きを自動で検知。介護職員が速やかに状況を把握できる仕組みとした。

口腔ケア・リハビリも

 日本の施設での研修を通じ、職員の口腔ケアに対する意識も大きく高まった。職員は、歯磨きや舌苔の清掃といったケア方法のほか、適切な実施頻度やケア用具の使用方法を学び、施設内の口腔ケアを強化。現在は、利用者の残存能力に合わせ、自ら歯磨きなどを行うことも促している。

 さらに、施設ではリハビリテーションによる生活機能の回復も推進。理学療法士と作業療法士による多職種チームを編成し、転倒リスクの低減だけでなく、利用者が自ら口腔清掃などを行うことも支援。日常生活の中の小さな身の回りのことから始め、少しずつ生活の主導権を取り戻し、自己肯定感を高めることを目指している。

 邱代表は「口腔内の状態が改善し、リハビリテーションによって身体機能が徐々に回復すると、利用者の食事の状況も良くなる。表情や活動量も以前とは大きく変わってきた」と話す。

 こうした取り組みによって、高齢者は施設内から外へ出ることに前向きになり、外出活動に参加する人の数や食事摂取量も増加している。
日本で学んだ口腔ケアが定着

日本で学んだ口腔ケアが定着

若い職員の採用と定着に成功

 入居型施設では、シート型の離床センサーを導入し、利用者の生体データや離床状況をリアルタイムで把握している。何らかの異常が生じた場合はシステムが自動で検知し、ナースステーションへ通知するため、介護職員の巡回や管理に伴う負担の軽減につながっている。

 地域密着型のデイサービスセンターでは、スマートケアシステムを導入。利用者の血圧や脈拍などのバイタルデータを早く正確に測定し、データを自動的にクラウドへ送信する仕組みだ。

 これにより現場の業務効率が向上するだけでなく、家族もスマートフォンのアプリを通じて、利用者の身体状況をリアルタイムで確認できる。ケアの透明性が高まり、家族の安心感にもつながっている。

 近年は台湾政府も補助制度などを通じ、介護分野へのテクノロジー導入支援を拡充している。同グループは介護人材不足を約10年前から予測し、早い段階から積極的にテクノロジーを導入してきた。

 こうした取り組みは、若い人材の採用にもつながっている。職員の平均年齢は約30歳で、管理職にも若い職員が多く登用されている。邱代表は「単純で反復的な作業ばかりでは、若い人を引き付けることは難しい。ITやテクノロジーを活用することで、若い人に介護の仕事への関心を持ってもらうことができる」と話す。

 処遇面でも、職員の専門性や技能に応じて給与を決める仕組みを導入しており、給与水準は地域の平均を上回っている。給与の引き上げも毎年実施しており、職員の定着率は9割を超える。

 同グループは今後、日本との連携をさらに深める計画だ。日本の関西シルバーサービス協会(福田光正理事長)と協力し、施設内に日本の優れた福祉用具を展示・販売するスペースを設置する予定で、台湾南部での福祉用具普及を目指す。

 また、台湾の先進的なテクノロジー活用と日本の介護経験を組み合わせ、新たな介護用品や介護テクノロジーを開発することも構想している。

 邱代表は「これからも日本の介護技術を学び続け、台湾の文化や現場のニーズに合わせて調整・最適化した上で、より多くの介護現場に広げていきたい」と話した。
(シルバー産業新聞2026年9月10日号)

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