未来のケアマネジャー

デジタル・ケアマネジメントが新たな時代を拓く/石山麗子(連載16)

デジタル・ケアマネジメントが新たな時代を拓く/石山麗子(連載16)

 「アセスメントに始まり、アセスメントに終わる」。それくらいケアマネジメント・プロセスにおいてアセスメントは重要な過程の一つだ。

 ケアプラン3表(週間サービス計画)は24時間表記だが、利用者の24時間の生活を的確に把握するのは困難であり、それができるケアマネジャーは皆無であろう。

 専門職が目視できる範囲、利用者と家族の語りから読み取る情報収集、これが現在のアセスメントのベースとなる情報だ。事例検討会や地域ケア会議でも「おそらく~だと思う。」というケアマネジャーの報告ぶりは珍しくない。在宅のアセスメントには限界がある。それを私たちは技量でカバーしてきたが、ややすれば長年「仕方のないこと」と諦めてきた。

 限定的な情報から分析して展開するケアから得られる効果はどうしても限界がある。私たちが目指す「利用者にとってのより良い生活を実現」の可能性をさらに高める為にはどのような方策があるのか。その答えとなる取り組みの一歩が始まっている。

 3月26日、パナソニック株式会社は、国内初、在宅高齢者のケアマネジメントの質の向上を狙い、自治体(宮崎県都城市)、宮崎県介護支援専門員協会都城・北諸県支部、および医師会(都城市北諸県郡医師会)と共同で、IoTモニタリング等を用いた在宅高齢者向け「デジタル・ケアマネジメント」の効果検証を実施した、とある。

 この取組みには2つのポイントがある。①つは、在宅の高齢者の生活実態を複数のセンサーを活用・数値化し「見える化」すること、②つ目に厚労省が進める「ケアマネジメント標準化」の理論を用い、独自開発したケアプラン作成機能により分析すること。

 ①は、センサーが排泄回数、食事回数、服薬、睡眠、活動量等を数値化するいわば視覚の機能を果たす。②は理論による分析で頭脳の機能を果たす。本研究には更に注目すべき点がある。これまでロボットやセンサー技術の研究開発は、国でさえ施設だけを対象としてきた。なぜかは明白だ。ケアマネジャーならすぐに想像できると思うが、在宅利用者に新技術の研究に3カ月間協力を求めるのは難易度が高い。この研究が一定の成果を得るにあたり、高い障壁が立ちはだかっていたはずだ。〝家での暮らし〟に100年以上もこだわりを持つパナソニックならではの企業理念と、高齢者の暮らしに寄り添う使命感や情熱を感じた。

 現場にマッチする技術開発には、研究開発側と専門職の協働は不可欠だ。このような新たな多職種連携というべき取り組みの積み重ねのありようが在宅高齢者の生活の質と在宅介護の限界点を左右する鍵を握るということにも着目しておきたい。実際に、この研究には4人の利用者がご協力になったが、全員QОL向上を実感され高い評価を得ているようだ。

 都城市の地域ケア会議では、24時間×3カ月=1万1520時間に及ぶモニタリングデータに基づく事例分析と検討を行い、医師を含む専門職も利用者の心身状態や医療介護連携上の効果を認めている。

 利用者や家族は、ケアマネジャーが分析したデータについて説明を受け、参考にしながら生活実態を振り返る。例えば、体調の変化によりふだんの排泄回数は9回以下なのに、15回の日があった。これまでなら本人や家族が言わなければ見過ごされてきた。解決されず、家族は介護負担を感じる経験となるだけだった。実はこのような積み重ねが家族からみた在宅の限界点を左右するのだ。このシステムを活用するケアマネジャーは翌朝出勤するとデータを確認し、排泄回数に着目し連絡した。家族が最初に受けるのは労いの言葉だろう。それから出来事を一緒に確認し、原因や対策を一緒に探るが、そのときに睡眠、食事、服薬、活動量等複数のデータがその役に立つだろう。医師には科学的なデータをタイムリーに報告でき早期対応が可能となり悪化の防止につながる。たった4人の実証と思うかもしれないが、3カ月のモニター総時間は1万1520時間、1人につき2812時間にのぼる。

 ケアマネジャーの視覚や頭脳の補助となる機器を活用したデジタル・ケアマネジメントは、新型コロナウィルスが猛威ふるうなか、遠隔モニターシステムとしても利用者と家族と繋がる有効なツールとなり、多職種連携や地域ケア会議の新たな時代の一ページを拓くポテンシャルがありそうだ。

 石山麗子(国際医療福祉大学大学院 教授)

(シルバー産業新聞2020年4月10日号)

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