施設サービスはどう変わっていくのか

動画が簡単に配信される時代の介護事業危機管理/菊地雅洋(連載47)

動画が簡単に配信される時代の介護事業危機管理/菊地雅洋(連載47)

 介護福祉士養成校で非常勤講師を務めているが、学生にサービスマナー教育を行い、顧客である利用者に対して適切な言葉遣いや態度で接することができるように育てても、実際に就職した先で、先輩職員がマナー意識に欠け利用者に対して、「タメ口」で接しているとしたら、そこで新入職員だけがマナーを持った対応に徹することは難しくなる。

 場合によって若い職員は、自分の身を護るために、サービスマナーのない先輩職員に迎合しなければならなくなる。介護事業におけるサービスマナーの必要性を十分理解していたはずの元生徒たちが、腐ったミカンの方程式のごとく、先輩職員の醜い言葉遣いに染まり、利用者に対して横柄な態度になることはあまりにも哀しいことだ。

 そんなふうに介護福祉士養成校の新卒者をダメにする職場の経営者や管理職に警告しておきたいことがある。それは職員のマナー教育に関心がなく、利用者に対するタメ口を放置している介護事業者は危機管理がなっていないという意味であり、その代償をいつか支払わねばならないかもしれないということだ。

 介護事業者での虐待がたびたび報道される昨今、自分の家族は大丈夫かと不安を持つ家族は多い。しかも今の時代はスマホで簡単に動画撮影できる時代である。隠し撮りをしなくとも、面会中に何気なく見かけた職員の対応をスマホで簡単に動画撮影しネット配信できる時代なのだ。

 年上の利用者に対する言葉遣いに配慮のない会話は、第三者から見れば若い職員が高齢者に生意気な口をきいているような印象を与え、場合によっては罵倒しているとみられることもある。そのような場面が切り取られてネット配信されたときに、「あれは親しみやすい言葉として使っているだけで、関係性ができているから問題ない」という言い訳が世間に通用するだろうか。そんな屁理屈が通用するわけはなく、タメ口で対応している姿そのものが罵声とみなされ、世間の糾弾対象となるかもしれない。そのことによって事業経営が危うくなる可能性さえある。

 だからこそ、タメ口で話しかけたほうが親しみを持たれるとか、関係性ができていればそれは許されるという素人的な考えを改める必要がある。そしてすべての従業員がいつ仕事中の姿を動画撮影されても良いように、顧客である利用者に適切に接することができる職員教育を徹底すべきである。サービスマナー教育は、そのために必要不可欠な基礎教育であり、セーフティネットである。

 サービスマナー教育を行っていない事業経営者や管理職は、近い将来マスメディアの前で、「お詫び」の記者会見を開くことになるかもしれない。そんな自分の姿を一度想像してみてはいかがだろうか。

 菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)

(シルバー産業新聞2019年10月10日号)

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