施設サービスはどう変わっていくのか

人材育成のシステム見直しが急務である理由/菊地雅洋(連載51)

人材育成のシステム見直しが急務である理由/菊地雅洋(連載51)

 介護施設の最大の経営リスクは人材不足である。だからと言って人材は湧いてこない。国の施策で日本中の介護施設の人材が充足することも考えにくく、施設独自で人を育て、人材が定着するシステムを構築しなおさねばならない。

 そういう意味では人材育成のシステムがない介護施設が、今いくら収益を確保していようとも、それは砂上の楼閣である。

 就業初日からOJTと称して、金魚の糞のように先輩職員について歩かせ、根拠のない、「見て覚えろ」的な作業指導を教育と勘違いしている介護施設からは人材がいなくなる。職員が育ち定着する介護施設は、実務教育に入る前に社会人としての心構えを含めた基礎教育を行っている。座学で介護の基礎知識も叩き込んでいる。そのため実務に入る前の教育期間は2週間~1カ月にも及んでいる。

 そうした基礎学習の期間にサービスマナーの教育も徹底している施設は、経験・未経験の人がどちらも安心して働くことができる職場であるとして評判になり、募集に応募してくれる人も増えている。だからそうした施設では、職員が慢性的に不足して業務が回らなくなることがない。そのため新人教育にそれだけ時間をかけて、採用したばかりの職員が数週間から一月もの長期間、介護サービス実務に携わらなくとも現場が廻り、人手が足りなくて困るということにはなっていない。

 しかもそれだけの期間をかけて教育した新人に対して、OJTツールをしっかり準備しながら、座学の知識を実務の中で確認できる本物のOJTを行うので新人が伸びていく。そのため戦力になるのも早いという好循環が生まれる。つまり実務に入る期間が先になろうとも、就業前の基礎座学・基礎訓練に時間をかけている事業者の方が、新人が実務に入った後で業務に溶け込むスピードは速くなり、全体から見ると従業員の業務負担が減り、働きやすくなるのだ。

 そのようなシステムが全くないところは、作業労働しか教えないので、新人職員は先輩職員の根拠のない介護技術を見よう見まねで覚えなければならない。その中には稚拙な間違った介護技術が含まれており、新人職員が首をかしげながら変な方法を教わることになる。そこで仕事を覚えられるかどうかは、個人の能力にかかってくることになり、個人差が大きくなる。

 そんな環境で、いつまでも仕事が覚えらずに中途退職する人も増えていくから基礎座学に時間を割くゆとりもなくなり、人が集まらず定着しない職場となり、いつまでたっても人手が充足することはないという悪循環に陥る。

 この悪循環を断ち切らねばその介護施設に未来はないのである。だからこそ今、介護施設の教育システムの改革に向けた、経営者の覚悟が求められていると言ってよいだろう。

 菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)

(シルバー産業新聞2020年2月10日号)

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