施設サービスはどう変わっていくのか

令和という時代に介護イノベーションを/菊地雅洋(連載42)

令和という時代に介護イノベーションを/菊地雅洋(連載42)

  介護施設の人材不足が話題になることが多いが、人手が常に足りないと嘆いている事業経営者は、職員募集の方法をどうするのかを考える前に、定着率を上げる対策が求められることを自覚してほしい。

 定着率が低いままで、職員募集技術だけをコンサルタント会社から学んで、応募人員が増えたとしても職員が充足することはないのである。底割れの人員募集は意味がないのだから、職員が辞めていく根本原因をさぐり、人材が定着するシステムを早急に構築しなければならない。そうしないことには人手不足がさらに深刻化し、事業経営はままならなくなるだろう。

 事業者として集めたいのは、単なる人員なのか、将来「人財」となり得る人材なのかということを考えてほしい。誰でもよいとして集める人員は、職場に害をなす「人罪」となる危険性もある。介護事業者から有能な職員が退職する理由の一つが、サービスマナーのない「人罪」による利用者に対する汚い言葉遣い・荒々しい態度によって生ずるストレスである。「こんなやり方が、人の役に立つ方法とは思えない」・「こんな職場にいては自分も駄目になる」として人材が逃げていくのだ。そういう事業者はずっと人員不足で悩まざるを得ないし、サービスの質も低下して、やがて利用者からも選択されず、事業経営危機に陥る。

 利用者に対する対応が丁寧で、根拠ある介護実践を行っている職場には、有能な人材が集まり定着する傾向がある。そうであるからこそ、職員のサービスマナー教育を徹底し、顧客対応の品質向上という差別化を図って、有能な人材を集めることが必要不可欠になる。

 なぜならどんなに国が人材対策を取ろうとも、日本全体・地域全体で介護人材が充足する見込みはなく、人材集めでも勝ち組と負け組に分かれざるを得ないのが、現在から将来にかけての日本の状況だからだ。

 新入職員が利用者に適切な言葉遣いで、丁寧に対応できるかどうかの分かれ目は、入職したその場所で、日ごろ先輩職員たちがどのような言葉遣いと態度で、利用者に向かい合っているかにかかっている。新しい入管法によって、日本の介護現場に飛び込んでくる外国人も増えることになるが、その人たちは事前の日本語教育で、「です」・「ます」という言葉遣いを教えられて、「タメ口」の会話法は教えられていない。そういう人たちが介護現場で先輩職員の口調をまねて、入職して数日も経たないうちに、利用者に対して「タメ口」で接するようになるとしたら、これはもう悲劇を通り越した喜劇でしかない。

 介護施設において、職員に対するサービスマネー教育とは、人材確保の手段としても必要不可欠であることを、経営者は知るべきだ。

 菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)

(シルバー産業新聞2019年5月10日号)

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