施設サービスはどう変わっていくのか

新年最大の課題は新処遇改善加算の配分をどうするのかということ/菊地雅洋(連載39)

新年最大の課題は新処遇改善加算の配分をどうするのかということ/菊地雅洋(連載39)

 介護報酬の改定が行われた翌年は、3年後の報酬改定に備えた議論が行われるものの、本来ならば制度運営に影響する大きな改正や改定は行われないのが通常である。しかし今年10月には消費税の引き上げが予定されており、それに合わせた改定が予定されている。

 改定率は2.13%(処遇改善1.67%、消費税対応0.39%、補足給付0.06%)で、区分支給限度額も増税分引き上げられる。これによって介護報酬は2年連続の引き上げとなるわけだが、それは次期報酬改定(2021年4月~)には逆風となるもので、手放しで喜ぶべきことではない。

 その中でも特に悩ましいのは「新介護職員処遇改善加算」の問題である。この加算は「勤続10年以上の介護福祉士がどれだけいるか」を指標として、サービス種別ごとに2段階の加算率が設定され、現行の加算Ⅰ~Ⅲを算定している事業者が算定できるものであるが、支給された加算をどのように配分するのかは事業者に裁量権が認められている。

 加算分全額を支給対象となっている経験ある介護職員のみに配分するのか、その他の介護職員にも配分を広げるのか、あるいは介護職員以外の他の職種にも配分するのかは、すべて事業者判断による。それはつまり配分には事業者間格差が生ずるという意味でもある。

 加算対象職員に全額支給する事業者では、他の職員の不満が噴出するだろうし、配分の幅を広げる事業者においては、経験のある介護福祉士に配分される額が削られるのだから、それらの職員の不満が高まるだろう。どういう配分方法が良いとか、どちらが有利だとか判断できる何ものもないのが現状であり、その答えのない判断が事業経営者に迫られてくるわけである。その結果、今所属している事業所より高い給与を支払ってくれる事業者を求めて、人材の流動化が加速される可能性も否定できない。

 このことは介護事業経営者にとって、非常に悩ましい問題であるが、その解決方法はたった一つしかない。それは現時点から、すべての職員に、新加算について丁寧にわかりやすく説明して、職場全体で議論し、その配分をどうすべきかを事業者の総意で決定するように導いていくことである。そしてこの加算の配分が最終的にどのような形になろうとも、それは事業者や事業経営者の収益にはならず、職員の給与等の待遇改善を目的として全額が使われるということを理解してもらうことだ。

 同時に良い人材は給与の多寡だけで職場を選ばないことを視野に入れてほしい。それは人材を増やすための最も効果的な配分方法を考えることは、人材となり得る有能な介護職員が働きたいと思える職場環境とセットで考える必要があるという意味でもある。

 菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)

(シルバー産業新聞2019年2月10日号)

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