リクルートキャリア（東京都千代田区、佐藤学社長）は、若者の就職支援サービス「就職Ｓｈｏｐ」と介護業界の就業人口を増やすためのプロジェクト「ＨＥＬＰＭＡＮ ＪＡＰＡＮ」（ＨＭＪ）との協働で介護未経験者の雇用創出に取組んでいる。プロジェクト開始後１年間で、就職Ｓｈｏｐを通じた介護職への採用は７.５倍に。就職決定数に占める介護職の割合も１％未満から５％に伸びている。

　同社ＨＭＪ事業推進グループの尾股和華氏は「介護に特化した就職支援サービスは近年増えているが、多くは経験者・資格者が中心。業界外から人材を取り込まなくては、人材確保の根本策にならない」と指摘する。

　就職Ｓｈｏｐで求職者の面談を踏まえ、志向・適性があると判断した人には介護の仕事を選択肢として提示。関心を持った人へ仕事の詳細を説明する。

　本人が希望すれば、応募意思不問の介護現場の見学会へ案内。尾股氏によると、介護の求人を紹介した４人に１人が職場見学へ行き、そこから３人に１人が採用に至っているとのことだ。

　就職Ｓｈｏｐは主に２０代の求職者を対象とした就職支援サービス。書類選考は行わず、専任のキャリアコーディネーターが面談を重ね、適性や志向を引き出す。また、企業には全件訪問し、求める人材のヒアリングだけでなく、社風や仕事に対する姿勢等も把握。０６年に立上げ、面談者数は累計１１万人、登録企業数は１万社にのぼる。

　「もともとは、就職氷河期世代のフリーター問題を解決する目的で始めた事業。キャリアアップを目指して具体的な職務を志望する人よりも、就職がうまくいかず、現時点で漠然と自分の可能性を探したいという人が多い」と就職Ｓｈｏｐ推進部部長の中川竜宏氏。だからこそ、コーディネーターのノウハウが発揮できるのだと強調する。

　介護の仕事に関して言えば「最初から希望して来る人はほぼゼロ」と中川氏。しかし、面談の中でサービス業への志向がある人、また家族など身近な生活で介護に関するエピソードを持つ人には紹介する傾向が見られるという。「営業職を希望する人でも、理由を聞くと『人と接する仕事がしたい』と答える。介護の仕事を紹介する余地が十分出てくる」（中川氏）。

　面談で介護の仕事を説明する際、同社が重視しているのは、職場見学・求人紹介の際にどれだけ仕事のイメージを持ってもらうかという点。介護保険の理念から、多様な介護サービスの種類、サービスごとの働き方などを押さえる。

　その過程で「給与が低い」や「残業が多い」といった「５つの誤解」（図）を、データを用いて解きほぐすことで、介護の仕事に対する正しい理解を促す。

　尾股氏は「良いイメージだけを伝えるのではない」と強調。「例えば『自立支援』と言っても、個々のアセスメントや支援計画を立てる大変さ、それ以前に利用者の顔と名前を覚えるところからの関係づくりなど、汗をかかなければいけない部分も知ってほしい」と話す。これらに加え、事前訪問で収集した事業所の特色も提供。「今働いている人の入職経緯やキャリア形成などは、求職者にとって大切な判断材料になる」（尾股氏）。

　採用が決定した介護事業者の中には「介護の仕事を理解し、覚悟を持って入社してくれた」と高評価も。定期的な採用計画を立てるところや、未経験者の入職を機に、自社で研修プログラムの策定に急ぐところも出てきているという。

　「未経験者の採用志向が強い事業者は情報感度が高い。業界全体を見て、経験者だけではこの先確実に間に合わないことを予測している」と尾股氏は分析。「これまでは必要性は感じつつも、能力や適性が未知数で未経験者には手を出しづらかった。ここをより深くマッチングしていく。若者にとっても、介護業界が就職の選択肢として当たり前になる世の中を作ることが当面の目標」と意気込む。

　採用・不採用に関わらず、その理由を本人にフィードバックするのも同社の特長。「貴重な情報として次の活動に生かしてほしい。一つひとつを納得度の高い就職活動になるよう、支援したい」と中川氏は語った。

（シルバー産業新聞２０２０年４月１０日号）