支える現場を踏まえて

みんなに楽しんでもらえる地域活動へ/柴田範子(連載106)

みんなに楽しんでもらえる地域活動へ/柴田範子(連載106)

 前回当欄でご紹介した、小規模多機能事業所「ひつじ雲」の近くにある利用者A氏の自宅を借りて、地域活動を行えるようになるのは、耐震工事関係や若干の改修が終わる4月からの予定となった。

 それまでに解決しなければならない課題は山積しているが、一つひとつ解決していけるよう努力している。4月までの3カ月は、A氏の近所にある有料老人ホームの一部を借りて、月1回「集いの会」を催すことになっている。有老ホームの管理者が上層部にかけあって了承してくれた。協力者の方々にお願いし、気になる人一人ひとりに「出かけてみませんか」と一声かけてもらうことにしている。

 1回目だから、参加者は4人でも5人でも良いことにした。焦らず、じっくりと実績を積んでいきたい。当日はコーヒーやお茶、少しのお菓子を準備し、長く民生委員をしていたN子さんが、得意の折り紙で参加者と時間を共有したいと張り切っている。協力者のC子さんは、お蕎麦屋さんを仕切ってきた方。将来、蕎麦打ちもお願いしますねと耳打ちしてある。

 16年間地域活動として食事会を開いてきた経験から言えることは、楽しんで出かけるところがある人は介護保険を利用せずにいられることが多いということだ。着替えて、歩いて、皆さんに出会って話をして、楽しみながら味わって食べる。食事を食べ終えて
も、ワイワイ会話が弾んでいることが、心身に良いのだろう。

 A氏のお宅で地域活動が始まったら、対象がお年寄りだけでいいのかという問いかけもある。そこで、ひつじ雲と同じ川崎市幸区にある小学校で定期的に行われている「寺子屋」に、協力者に誘われて出かけてみた。毎週火曜日、寺子屋を運営しているのはリーダーさん数人とボランティアさん40数人。無理なく続けられるよう工夫しているとか。

 当日のメニューはけん玉、宿題、コマ回しで、小学1、2年生が対象だった。児童たちは自らメニューを選んで参加し、時間終了になると参加証に判子をもらい「ありがとうございました」と言って帰っていく。その後の流れで大人が反省会を行う。メンバーは子供との関わり方に悩むこともあるが、すべての子供にしっかりと向き合い関わっている。リーダーさんたちは、学校の先生方とも情報交換を行っているとのことだった。

 小学校の隣に大きな団地があり、団地に住んでいる方の多くが、寺子屋のボランティアをしている。「実は団地内でも、子供たちを相手にボランティアをやっているんですよ」と教えてくれた。いま団地で盛んなメニューは将棋だという。掲示板のあるところまで連れて行ってもらい、どのような計画で行っているのかを聞いた。すでに3月までの予定が貼り出されていて、「若い親御さんは、将棋を子供に教えられない方が多いので、団地の高齢者が親御さんや子供たちに教えています。親子が真剣に取り組んでいる姿はいいですよ」と自慢げだった。

 今後、A氏宅で何に取り組むかはまだ決まっていないが、近々、地域活動を多職種が連携して活発に行っているという東京・大田区の方にも足を延ばし、見学して来ようと思っている。ひつじ雲周辺の地域とは雰囲気も違っていて、未知の地域と言っても過言ではない。まずは楽しみたいなと思いながら、第1回の集いの準備に取り掛かっている。

(柴田 範子)

シルバー産業新聞2020年2月10日号

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