生き活きケア

「アレクサ、ベッドをあげて」/リハビリこんぱす(杉戸町)介護現場でロボット・ICTを活用して、利用者の自立した在宅生活を支える

「アレクサ、ベッドをあげて」/リハビリこんぱす(杉戸町)介護現場でロボット・ICTを活用して、利用者の自立した在宅生活を支える

 埼玉県で定期巡回・随時対応型訪問介護看護や、デイサービス等を提供するリハビリコンパス(埼玉県春日部市、袴田徹社長)では、「本人の能力を最大限に活かす自立支援」に取組んでいる。今年2月から脊椎損傷者の自立した在宅生活実現のために、クラウド音声サービス「アレクサ」などのICT・ロボットを活用したケアに取組んでいる。「自分の好きなタイミングでベッドを操作できるのが何よりうれしい」と大変喜ばれている。

 埼玉県杉戸町にある定期巡回・随時対応型訪問介護看護「リハビリこんぱす」では、ICTやロボットの導入により、最低限の訪問で利用者の自立した在宅生活を実現している。

 今年2月から脊椎損傷を患った松井かずえさんの自宅に、クラウド音声サービス「アレクサ」と、同機器に対応して声で操作できるスイッチ機器などを導入した。

 スイッチ機器を介護ベッドのリモコンにセットすることで「アレクサ、ベッドを上げて/下げて」と言うだけで、操作が行える。

 松井さんの担当ケアマネジャーから「退院後は利用者自身の力でできる限り在宅で暮らせるよう、生活環境を整えてほしい。その際に機器なども活用してほしい」との依頼を受けたことが導入のきっかけ。

 松井さんは退院時「私にできることはないから、何でもいい」と何事にも消極的だったという。 アレクサを活用することで①ベッドの背もたれ、足上げ操作②電気のON/OFF③テレビのON/OFF――などを声だけで行えるようになった。

 現在は、アレクサを使いこなして、自分のリズムに合わせた在宅生活を過ごしている。

 「何よりもベッドを自分で操作できることが本当にうれしいです」と松井さんは笑顔で話す。

 同社作業療法士の岩崎勇樹さんは「松井さんの好きなタイミングで背上げ調整ができるため、褥瘡リスクを軽減して、痛みなどが発生せず快適に過ごすことができている」と話す。

 また、アレクサにはカメラもついており、サービスの提供状況や訪問診療の様子を、同居する旦那さんが勤務先でも遠隔で見られるのも安心感に繋がっているという。

 アレクサや関連機器の他、インターネット接続に必要な機器は同社で用意し、レンタルしている。
松井かずえさん「私のような多くの人 に伝えてほしい」と取材を快諾頂いた

松井かずえさん「私のような多くの人 に伝えてほしい」と取材を快諾頂いた

自分らしい生活を支える

 脊椎損傷の人を在宅で支援する場合、最低でも1時間に1回、5分程度の体位変換が必要となり、また家族の介護負担を軽減する点から定期巡回を利用するケースが多いという。

 一方で「利用者のなかには、頻回に訪問してもらうことが申し訳ないと感じる人もいる」と岩崎さん。

 ICT活用により、自分でできることを増やし、最低限の訪問回数で在宅生活をサポートする体制を整えた。利用者からは「少ない訪問回数でも、緊急時や必要な時にすぐに対応してもらえる体制があり安心している」と好評だ。

 袴田社長は「定期巡回は定額制のサービスだが、生活全てを手伝う介護では、利用者の自立に繋がらない」と指摘。

 「緊急訪問の体制も整えつつ、利用者自身のできることを増やして、自立に繋げられる柔軟性の高いサービスだと考えている。必要な人に定期巡回を充分に利用いただけるよう、今後も取り組んでいきたい」と意気込む。

(シルバー産業新聞2020年12月10日号)

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