支える現場を踏まえて

提供された土地で障がい者GH開設へ/柴田範子(119)

提供された土地で障がい者GH開設へ/柴田範子(119)

 NPO法人「楽」として念願の、身体障がいのある方々が住まうグループホームの地鎮祭が、先ごろようやく執り行われた。道半ばで課題は山ほどあるが、一つずつ解決していこうと思う。

 本来なら年度内に完成し開所に至るはずだったが、新型コロナウイルス感染症のために何もできない期間が長く、さらに国有地を活用してNPO法人が運営する形のため、手続きがスムーズに進まなかった。地鎮祭の日は、「この土地を福祉に活用してほしいと、亡き母親に言われた」と、土地の隣に住むNさん夫婦に声をかけられてから2年が経っていた。
 時間がかかったが、手続きを何とかクリアでき、ここまで来たのも、賛同してくださった多くの方々の力添えがあったからと感謝している。
 東日本大震災で、築年数の古い小規模多機能「ひつじ雲」の建物が損傷したため、そこから転居し、新たな施設を作ろうと思った時は、自身の年齢的にも勢いがあった。今回は若くない年齢と、国が求める書類づくりなど、初めて体験する手続きに右往左往した。知らないことが多すぎたのだ。

 国有地には古い木造2階建ての建物があり、それを取り壊して新たに木造2階建てを建てる承認を得るため、承諾料を支払う必要があった。その日、「提出して頂いた多くの書類は初めて目にするものでした」と何人かの担当者が話していた。その言葉を聞き、普通の手続きではなかったのだと納得し、心が軽くなったのを覚えている。
 地鎮祭をどこの神社に執り行ってもらうか検討していたところ、Nさんが知り合いの神社の宮司に頼めば、と声をかけてくれた。ひつじ雲の地鎮祭の時の宮司は、今回お願いした宮司の大先輩の父親だった。 地鎮祭の前日には、「工務店さんが明日の準備に取り掛かっているよ」と、Nさん夫婦から電話をもらい、当日に必要だと言われていた酒や米、塩、魚、野菜、果物などを揃えるため買い物に出かけた。魚は生魚というわけにいかず、するめなどでも良いというので、何軒か回ったが置いていない。これで最後と入った店に、申し訳ないほど小ぶりのするめが3枚セットで置かれていた。

 地鎮祭のために必要な砂を撒き、竹ぼうきで目をそろえるなど、工務店の人の動きは慣れたものだった。他にテーブルや椅子、テント、儀式に参加するために手を清めるための入れ物など、準備にぬかりはなかった。

 儀式を執り行う過程で、宮司は盛砂に鍬入れを行うが、その意味を教えてくれたり、玉ぐしを受け取った際の所作など、細かに伝えてもらいながら執り行えた。工務店の社長さんが地鎮祭終了後に、「これまで長い間、地鎮祭に参加してきたが、今回のように丁寧に行ってくれた地鎮祭は初めてだね」と言ってくれた。

 この日は真冬のような寒さだったが、前日の雨風が去って晴天が広がった。Nさん夫婦は、この日を「お天道様に晴れにしてもらえたね」と自分のことのように喜んでくれた。これから新しい建物の建築確認書が届き次第、グループホームの建築が始まることになる。
(シルバー産業新聞2022年4月10日号)

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