支える現場を踏まえて

地域に溶け込めるグループホームを/柴田範子(連載114)

地域に溶け込めるグループホームを/柴田範子(連載114)

 筆者が代表を務めるNPO法人「楽」の小規模多機能型居宅介護「ひつじ雲」(川崎市)では、日本財団の協力を得て、職員全員が毎週唾液を提出しPCR検査を実施している。8月の半ばまで毎週のことで慌ただしさも感じるが、大事な検査である。

 事業所を利用する高齢者の9割以上はワクチン接種の予約ができた。一人暮らしの方が多く、職員たちが地域のかかりつけ医などにお願いしてできたことだ。残る1〜2人も、もうじき予約できる見込みで、ご家族や地域の医師、職員たちの協力により、予防徹底の取り組みを進めつつ、いつもと変わらず過ごせているのが何よりだと感じている。
 事業所を利用する高齢者の9割以上はワクチン接種の予約ができた。一人暮らしの方が多く、職員たちが地域のかかりつけ医などにお願いしてできたことだ。残る1〜2人も、もうじき予約できる見込みで、ご家族や地域の医師、職員たちの協力により、予防徹底の取り組みを進めつつ、いつもと変わらず過ごせているのが何よりだと感じている。
 1年前、地域に土地を持つAさんから「母親の残した土地を使ってみませんか」と声をかけてもらった。Aさんのお母さまは施設入所するにあたり、住んでいた古い家が建つ土地を「福祉に役立ててほしい」と託したという。入所中に新型コロナウイルス感染症が拡大し、土地の手続きをしようとした矢先に、施設での面会ができなくなった。

 そうするうち、お母さまは施設内で転倒し入院。入院先でも面会はできず、体力が低下したお母さまは昨年11月に亡くなった。親族間での財産分与もあり協議に時間がかかったが、Aさんがその場を収めた。それと同時進行で、私たちはAさん夫婦と話し合って、身体障がい者のグループホームを作る準備を始めることにした。
 小規模多機能事業所が新たな事業に取り組むのは、賭けのようなものではないかと心配する声もあった。手続きの初めの段階から、費用がかかる専門家には頼めない組織運営上の弱さがある。理事たちに説明し、何度も何度も書面での理事会を開いたり、オンライン会議で話し合ったりして、合意を得た。

 こつこつと無償で協力して下さる方々の知恵を借りて、NPO法人への土地の譲渡手続き、市への様々な申請、設計業者との打ち合わせ、銀行からの融資等々、やるべきことはまだ山のようにあるが、協力を得ながら一歩ずつ進めている現状だ。

 なぜ、あえて身体障がい者のグループホームにしようとしたのか。そして、地域と共にあるグループホームにと思っているのか。

 昨春、ある不動産会社の方から「身体障害1級、障害区分4の方のアパートを探す手助けをしてもらえないか」と依頼があった。川崎市居住支援協議会の協力事業者として活動していることを知っている方からの依頼だった。

 当事者のBさんは様々な課題を抱えていて、施設を退去させられたり、親族の協力でしばらくビジネスホテルや簡易宿泊所で過ごしたりした。うつ傾向があるBさんにとっては落ち着けないと、ご本人と会って強く感じた。

 身体障がい者向けのアパートは、地域で目にしたことがない。最終的に見つかったアパートの空き部屋を全面改修し、段差をできるだけ減らした。落ち着いた地域にあったこともあり、Bさんは「ここでいい」と決めたきっかけになったようだ。

 定期的に訪問し話をさせてもらっているが、様々な関係者の支援を受けながら、自分の部屋での暮らしに落ち着きを見せている。

 いま住宅用木材の価格が高騰しており、建て直し費用で頭を悩ませているが、図面に描いたグループホームが完成し、地域に溶け込める場所となれるよう取り組もうという気持ちがますます強くなっている。
(シルバー産業新聞2021年6月10日号)

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