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大田区で大規模なケアプラン点検研修/宮下今日子(連載75)

大田区で大規模なケアプラン点検研修/宮下今日子(連載75)

  東京都大田区では、区内約300人のケアマネを対象に「みんなで作ろう!ケアプラン点検」と題する研修会を2月に開いた。この研修は、NPO法人大田区介護支援専門員連絡会(浜洋子理事長)が区から委託を受け、年5回開催の一環として行った。 

 東京都では「保険者と介護支援専門員が共に行うケアマネジメントの質の向上ガイドライン」(東京都保健福祉局)を発行している。今回の研修は、このガイドラインを参考に、すでに実施されたケアプラン点検事業を振り返るもので、同区福祉部介護保険課の黄木隆芳課長は、「利用者の自立支援につながる適切なケアプランが作成されるよう、ケアマネジャーの気付きを促し、介護給付の適正化に着実につなげていきたい」と研修目的を説明。点検というと身構えてしまうが、日頃、ケアマネがどこで悩み、つまずいているかを出し合い、お互いに知ることで、より良いプラン作成につなげたい、と続けると会場には安心感が広がった。

 大田区では約500人の給付管理業務を行う実働ケアマネがいるが、受託した同連絡会は、区内のケアマネを対象に、8月からすでに2回の点検を実施してきた。1回目は「認知症の利用者のケアプラン」で99件を、2回目は「独居の利用者のケアプラン」で87件を集め、同連絡会の役員約20人が点検。点検は前出ガイドライン中の「面接ポイントシート」項目に沿って行った。結果を少し紹介したい。

 ケアプラン第1表の「利用者及び家族の生活に対する意向」欄では、本人の言葉をケアマネが自分の言葉で翻訳していると思われる記述が半数もあった。また「総合的な援助の方針」欄では、利用者が理解しにくいと考えられる書き方が56%を占めていた。

 第2表では、▽長期目標と短期目標の記述が類似している▽長期目標にニーズとの連動性がない▽サービスの利用が目標になっている▽セルフケアの記載がなかった(64%)――などが挙がった。

 第3表では、▽セルフケアやインフォーマルの記述がない▽サービス利用のない日の記述がない▽医療サービスの記述がない――などが挙がった。第3表は第2表と連動して、ソフトがはじき出すケースが多いが、手書きでの加筆が必要との指摘があった。

 この2月の研修では、すでに情報が書き込まれた基本情報とリ・アセスメント支援シートを読み込み、各自で第2表(課題解決の目標立て、支援の分担)を作成し、グループ討議を行った。

 ディスカッションに参加してみると、細かく読み取り、たくさんの気付きがあるケアマネもいて、互いの気付きにより、自らのプラン作成を省みる良い機会になっているようだった。

 第2表は、アセスメントに基づき、課題解決の目標を立て、支援の内容に至るよう、左から右に進めるのが基本、と同連絡会の役員は指摘する。そのためには、アセスメントが重要だ。

 しかし、会場からは、これだけ詳しいアセスメントはなかなかできていない、リ・アセスメント支援シートからプランを作ってみたが、現実の業務の中では時間を捻出しなければならない、などの意見が挙がった。

 第2表の作成には、同連絡会の役員が指摘するように、左から書く訓練が必要かもしれない。18年度は186件の居宅ケアプランを点検し、区内約5分の3のケアマネが点検研修を受けたが、大田区ではこの成果を基に、19年度も研修を継続していくとしている。

 宮下今日子

(シルバー産業新聞2019年4月10日号)

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