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「ケアマネジメントの標準化」って何?/宮下今日子(連載77)

「ケアマネジメントの標準化」って何?/宮下今日子(連載77)

 ケアマネジメントの標準化、と聞くとどう感じるだろうか――。度重なる制度改正に加え、“AI化” “標準化” など新しい用語も耳にするようになり、ケアマネジャーを取り巻く環境は今後、大きく変化しそうだ。そんな中、昨年12月に発足した東京都の品川区介護支援専門員連絡協議会(鈴木たづ子代表、会員約180人)は、ケアマネジメントの標準化をテーマに研修会を開いた。同テーマでシリーズ化された都内研修会は2カ所目。

品川区介護支援専門員連絡協議会で研修

 講師は、遠藤征也氏(元厚生労働省老健局介護保険指導室長)と、石山麗子氏(前同局介護支援専門官、国際医療福祉大学大学院教授)。両氏は「適切なケアマネジメント手法の策定」(2016年〜、老健事業調査)を厚労省で企画・概念化し、現在も検討会メンバーだ。

 遠藤氏は「ケアマネの力量によってケアマネジメントプロセスにおけるアプローチ方法に差異が生じている」、「ケアプランの支援内容のばらつき」と「根拠を説明できない」点などを課題として挙げ、標準化の必要性を説明した。

 標準化の目的は、ケアマネ個々の支援内容の差異を縮め、根拠の明確な支援内容を提示し、多職種連携を推進することにある。現場に即して言えば、サービス担当者会議などで、根拠を示すことで多職種の納得は数段と得やすくなる。根拠があれば、バトンを繋ぐ職種も見えてくる。専門職の介入でモニタリング事項も専門化し、無駄のない、自立支援・重度化防止に向けた支援に繋がる道が開ける。標準化とは、この目的のためにケアマネジメント過程を将来の予測に基づく支援内容やモニタリング項目を提示する試みと言える。他職種もケアマネに期待することは大きい。

 では、具体的に標準化とはどうすることか? ケアマネジャーの現場経験もある石山氏は、私たちがケアマネの先祖となり大切な理論を子孫に伝えるエピソードを交えながら熱く語る。

 まず、石山氏の現役時代のアセスメントを紹介してみる。石山氏はケアプラン第3表を使うそうだが、お宅に伺うと、目覚めの時間と起床の時間を尋ねる。確かに覚醒時間と起床時間は少し違う。起きてから最初にすることを聞き、トイレならついて行き、動作の他、トイレ環境も見る。

 次に水を飲むことが分かると、コップはどれか尋ねる。続けて朝食のメニューを聞き、ご飯なら味噌汁の塩分量、パンなら何枚切りか、バターやジャムの有無は…、「あんまり細かく聞くので嫌がられることもあるんです」と言いつつ、実は食事や水分、カロリーの摂取量、排泄などを計算している。

 離床していても、ソファーで寝ているなら活動量は下がる。提供された食事や水分量と実際の摂取量とは違う、と続けると、大方は私もやっているが、そこまではとても…」と話すケアマネもいた。

 この研修では、標準化の構成項目のうち「基本ケア」を学んだ。その中でも、「病状・病態予測と予防の重要性」の「食事と栄養」を例に演習した。具体的には、BMI値、適正体重、必要水分量、基礎代謝量を計算。身体と栄養は密接だから、栄養状態の指標を作り、支援の根拠を示して多職種に繋げることはとても大事。標準化は、支援に必要な最低限の項目を絞り込み、それにより支援内容の均一化、可視化、共有化を図ることだと言える。

 一見難しく感じるが、BMI値や基礎代謝などはネットで簡単に出力できるし、標準化のテキストには「実施内容」「必要性」「アセスメント項目」などが文章化されているので(公開済)、テキストを参照しながら取り組めるのだ。

 宮下今日子

(シルバー産業新聞 2019年6月10日号)

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