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アセスメント力をつけるには?/宮下今日子(連載73)

アセスメント力をつけるには?/宮下今日子(連載73)

 神奈川県介護支援専門員協会(青地千晴理事長)は、1月12日、ケアマネの思考を可視化するアローチャート手法を基礎から学ぶ研修会を開いた。

 同協会には県内のケアマネ1000人以上が登録している。今回は約90人が参加。アローチャートについては、初めて聞くというケアマネから、すでに3回も講義を聞いている、5年前からこの方法で勉強会を開いているという人まで様々。また、国際福祉機器展(HCR)でアローチャートを知ったという東京都から参加のケアマネは、東京都のリ・アセスメント支援シートは自分には使いにくく、それ以外の方法を探していたと話していた。

 講師の吉島豊録氏(梅光学院大学准教授)は、アローチャート研究会(2014年発足)の会長を務め、全国各地で普及活動を行っている。アローチャートは「収集された情報を、ケアプランに落とし込むまでのケアマネジャーの思考の足取りを、○(丸)や□(四角)、↓(矢印)などの簡単な記号を使って図式化したもの」と説明されている。

 アセスメント=課題分析というと難しく聞こえるが、「目の前の方をどのように理解するか、と言いかえてみよう」と語りかけ、和やかな雰囲気で始まった。

 よく質問されるのは、「アセスメントにとって必要な情報と必要でない情報が分からない」だそうだ。一般的にアセスメントはADL、IADLを記す情報フレームを使うが、情報は単独では意味がなく、情報と情報が繋がることで生きた情報になる。この点が重要だと吉島氏は強調する。例えば、褥瘡がある(結果)のは、痩せている(原因)からだ。それを知って初めて〝課題〞が見える。

 吉島氏は自分がケアマネをしていた時に、客観的事実を○で囲んでは考えていたが、ある時、本人の思い(主観的事実)がないと指摘された。アローチャートは、主観と客観の二つの情報と、それを繋ぐ矢印が基本構造(N構造)になる。

 例えば、主観は「買物に行きたい」、客観は「歩けない」だとする。前者のような願望の実現は、後者のような要因によって阻害されている。そこで、このマイナス要因を解決する方法を考えるのがケアプラン作成の第一歩となる。ニーズのないところにプランは成立しないが、ニーズを引き出すのはケアマネの苦労の一つでもある。

 引き出した情報が増えるに連れて図は広がっていくが、図の中で遠くになる課題は短期目標、近くになる課題は長期目標となる。図に示すことで目標がよく見えてくる。

 なぜケアマネは疲れるのかと吉島氏は投げかける。情報には静的情報と動的情報があり、動的情報は会話の中でうまれ、気分や時間で変化もする。そうした情報に振り回されると疲れてしまう。

 一方でケアマネが最初に出会う利用者の状態は静的情報で、その原因を推論し、長い人生経過に遡及し、そして再度現在に戻るのがケアマネの思考だ。これは高度な思考過程だと吉島氏は指摘する。また、人は相反する感情を同時に抱きやすく、とても複雑な存在。ケアマネは日々、高度な思考を行っているという。

 アローチャートは職場や地域単位での勉強会が広がっている。自分だけでは気づかなかった課題が出てくる、目から鱗が落ちた、という声も聞かれた。ケアマネの高度な思考を助けるこうしたツールがもっと必要なのかもしれない。

 宮下今日子

(シルバー産業新聞2019年2月10日号)

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