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サービス現場のグレーゾーンを考える/宮下今日子(連載78)

サービス現場のグレーゾーンを考える/宮下今日子(連載78)

 サービス提供責任者(以下サ責)や訪問介護員は、実務に追われ、なかなか研修に出られないという問題意識から、世田谷区介護サービスネットワークの訪問介護連絡会(宮川英子代表)が、サ責を対象にした研修会「サ責ランド」を昨年度から開いてきた。

世田谷区介護サービスネットワーク 訪問介護連絡会

 18年4月から運用された「老計第10号」(訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について)の一部改正については、現場で十分な理解が得られていない現状があった。

 そこで、今年度は、サービスのグレーゾーン全体を見直す研修会を、区内3カ所で約100人を対象として行う。その後、ケアマネジャー連絡会とも話し合う予定。サ責を対象とした研修会は都内でも珍しい。
 ――ご主人が亡くなって3日後に、ヘルパーが奥さんを訪問したところ、何も食べないでボーッとしていた。声をかけても返事がない。掃除機をかけながら様子を見守っていると、視線が仏壇に向かい、お花をじっと見ていた。「お花枯れそうですね、お水をかえてきましょうか」と言って花瓶の水を取り替えた。すると奥さんは「お花が枯れそうだったけど、あなたが来てくれてよかった。私、もう少し生きていていいかしら」とおっしゃった。
 「利用者さんに生きる意欲をもってもらえたことは、私たちヘルパーの醍醐味」と代表の宮川氏は話すが、この例のグレーゾーンは、「仏壇の花の水やり」部分。

 訪問介護の現場でしばしば混乱する点として、参加者からは、窓拭き、植木の水やり、電球の交換、外の
掃除、床の水拭き、クーラーの掃除などが挙がった。また、ケア時間がヘルパーによって違う、同居家族が来
て支援が必要ないと言われた場合、医行為の範囲なども疑問とし、他にも、酒やたばこの買物、散歩の同行、
院内介助、病院の見舞いの介助、中にはペットを撫でていいかなどもあり、日々困っている内容は実はたくさんあるようだ。
 なぜこうした問題が起きるのか? 講師の森永伊紀氏(世田谷社会保険推進協議会)は、厚生労働省老健局振興課長の自治体向け通達(「老計第10号」)を示しながら「個々のサービス行為の一連の流れは、あくまで例示であり」の点に注目し、サービスを提供する時には「当然、利用者個々人の身体状況や生活実態等に即した取扱いが求められる」という点を指摘した。

 つまり、利用者一人ひとりのアセスメントに基づいて、支援が必要な根拠を示すことが大事で、その支援を盛り込んだケアプランが訪問介護の根拠になる、ということである。

 ここで力を発揮するのが実は現場のヘルパーやサ責のアセスメント力。アセスメントはケアマネだけがするものではもちろんなく、各専門職がそれぞれの立場から行い、これを基にプランを作る。この点の再認識を会場に求めた。

 また、上記改正で「QOL」という文言が入ったことは重要で、先に挙げた仏壇の花の水やりは、少しの時間なので、本人の生き甲斐に繋がるならやってよいことになる。
 世田谷区の介護保険課には「事業者支援担当」という部署がある。同連絡会は現場の疑問を集めてそこに直接質問し、回答をもらってきた。このやり取りが大きな成果だったと話す。支援内容が変わるごとにケアマネに連絡し、何回もプランを書き換えているケースもあるが、疑問があっても判断がつかない、人によって意見が違う、意見を言いにくいなど、表面化しにくい現状もあるようだ。

 宮下今日子

(シルバー産業新聞 2019年7月10日号)

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