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「ケアマネジメントの標準化」 実践編その1/宮下今日子(連載84回)

「ケアマネジメントの標準化」 実践編その1/宮下今日子(連載84回)

 厚生労働省が「十年の計」で進める「ケアマネジメントの標準化」の実践例を紹介したい。(本連載2019年6月10日号で掲載)

生活実態を可視化することの重要性

 昨年5月に実施された「ケアマネジメントの標準化」基本ケアの研修(品川区介護支援専門員連絡協議会主催)に参加した、品川区杜松在宅介護支援センター(社会福祉法人三徳会)の主任介護支援専門員、葛巻隆志さんは、宿題として与えられた課題に取り組んだうちの一人。課題は利用者を一人選び、標準化の基本ケア(数値化)の観点から数カ月モニタリングすること。

 基本ケアは「生命維持・生活維持の基本となるケア」「すべての利用者を対象とした生活支援」「高齢者を対象とするケアマネジメントの基本となるケア」と定義され、主に飲む、食べる、排泄する、活動するの4点に着目し、可視化する点が特徴だ。 葛巻さんが選んだ利用者Mさんは、81歳女性。要支援1。独居。身長143㎝。体重33㎏。疾患は変形性腰椎症などで生活習慣病はなし。薬は痛み止め、ビタミンDを服用。

 モニタリング前のサービスは、リハビリに特化した短時間デイを週1回。訪問介護の生活支援週1回(掃除)。福祉用具貸与(ベッドサイドの手すり、歩行器)。訪問リハビリ週1回。自治体独自事業のさわやかサービス(社協)月2~3回。

 目標は「一人で外出できるようになる」こと。 Mさんを選んだ理由は、37㎏あった体重が33㎏に減ってしまい、対応を考えていた時と研修の時期が重なったため。

 モニタリングは5月末、7月末、8月末の3回実施。結果は、体重増加が見られ、標準化のモニタリング成果が見られた。その途中で、頼りの長男が海外勤務となり、体重減少が再び起きた。そこで9月から総合事業の訪問型サービス(管理栄養士派遣による栄養改善事業)に繋げた。管理栄養士が9、10、11月の3カ月入った結果、体重が3㎏増えた。

 具体的には、宿題の標準化シートを見ながら、まず起床から就寝までの生活リズムを把握し、食べ物の好き嫌いを聞く。朝、昼、晩のメニューを書き出して、摂取カロリーを計算。朝食は、イチゴジャム大さじ1=50kcal。バター大さじ1=100kcal。サラダ=22kcal。食パン1枚=158kcal。牛乳=90kcal。小計420kcalという展開。これを3食行い、1日の総カロリー摂取量を出す。

 Mさんは928kcalだったが、計算した基礎代謝量が約845kcalだったので、運動量から摂取量が不足していることを把握。さらにBMI値は計算の結果、16.1で低かった。水分量はお茶120mlを6回飲んでいることから、720mlと数値化し、体重1kgで30ml必要なので、必要量は990mlだと理解した。

 葛巻さんは「外出できる体力をつけることを目標にしていたが、リハビリの効果がなかなか出ず悩んでいた」と話す。今回の数値化でカロリーが十分摂れていないことが分かった。一人で外出できるようになるためには、タンパク質を摂取して、体重を増加させ、外出できる体力をつけることが必要だと改めて認識した。

 また、標準化シートの書き込みはMさんと一緒に行った(約1時間)が、数値化して、栄養マネジメントの重要性をケアマネが認識したことで、利用者に対する説得力が増した。さらに本人の食に対する意識も変わった、と前向きに捉えていた。 担当した管理栄養士の菅野奏実さん(青横ファーマシー薬局大井町店勤務。本社・アペックス)によると、当初の9月は昼食の欠食が多かった。補助食品やカロリーのある間食を勧め、その結果、3カ月で体重が3㎏増え、BMI値も17.1に改善した。

 Mさんは、「一人でいると、こっちの頭が、いいよ食べなくてもって囁くんですよ」とユーモラスにお話しする。葛巻さんに会って肉も魚も食べるようになり、菅野さんにもらった用紙に食べた物を記録し、体重も毎日測っているそうだ。

 葛巻さんはその後、他の利用者にも生活実態を可視化したが、説得力が増したと実感する。ケアマネジメントの標準化が図られることに手応えを感じていた。

 宮下 今日子

(シルバー産業新聞2020年1月10日号)

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